鬼のﾕｳﾜｸ ページ21
〈良いわね、Aさん〉
《青炎竜》が囁く。
〈このまま、怒りに身を任せましょう？そうしたら、この吸血鬼を倒す力を、私が与えるわ〉
その魅力的な申し出に、思わず応じてしまいたくなる。
だが＿＿
｢《鬼》に乗っ取られて、グレンさんを助けるわけにはいかないんですよ！｣
まるで自分に言い聞かせる様に、今までの倍以上の力を込めて刀を振るった。
｢！｣
その時＿＿クローリー・ユースフォードの眉が、ピクリと動いた。
まるで、慌てて軌道を変えるかの如く剣を薙ぐ。
しかし、それも一度きり。
また、刀を振っては止められ、剣を振られては止めての繰り返しが始まった。
クローリー・ユースフォードの異変はそれだけ。
けれど、言い換えれば＿＿
｢このまま押し切れば、倒せるかもしれない……？｣
そう声に出して、私の当初の目的を思い出す。
一瀬グレンを助ける。
その事だけだったはず。
クローリー・ユースフォードの生死は問うてないのだ。
なら＿＿
｢禍竜！｣
もう一人の《鬼》の名を呼ぶ。
｢グレンさんを拘束、そして……｣
刀を振りながら言う。
｢此処から全速力で退避して下さい！｣
その言葉に、クローリー・ユースフォードが首を傾げた。
｢誰に言ってるの？君の仲間なんて、何処にも居ないけ……｣
とまで声に出し、クローリー・ユースフォードが少しだけ目を見開いた。
｢まさか……｣
と言う吸血鬼に、私はニヤリと笑ってやる。
｢えぇ、その『まさか』ですよ｣
この部屋の空気が変わる。
パチパチと、まるで静電気の様に音を立て始め＿＿一瞬だけ、視界が白くなった。
〈《鬼》遣いが荒いだろ、主〉
私の耳にしか聞こえない声でそう言うと、
〈ま…良い。主の頼みだ、聞いてやるよ〉
《禍竜》は溜め息と共に、姿を現した。
視界に捉えたわけじゃない。
ただ、存在を感じ取った。
それと同時に、
｢キャアア！？｣
と悲鳴が上がる。
私は一瞬後ろを振り向き、
｢禍竜、月鬼ノ組の元へ！私が足止めしますから！｣
そう言って、《青炎竜》を横に薙いだ。
斬ったもの全てを燃やす力。
その力を使って、道を切り開く。
一瀬グレンは、《禍竜》に拘束されながらも＿＿
｢A！やめろ！離せ！！｣
《禍竜》の拘束を外そうとしていた。
私を助けようとでも、思っているのだろうか。
私は一ノ瀬グレンを半目で見つめ＿＿吸血鬼へと目を移した。そして、
｢私が相手です、吸血鬼！｣
と、一瀬グレンの後を追わせぬ様、刀を薙いだ。
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Sayura(プロフ) - ナガミさん» ありがとうございます！紹介させていただきます。お返事遅くなってしまってすみません。 (2017年2月19日 19時) (
レス) id: 5dae6bbc32 (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Sayuraさん» Sayuraさん、コメントありがとうございます。作者のナガミです。面白い…大変恐縮でございます。Sayuraさんが宜しいのであれば、紹介して頂いても大丈夫ですので、よろしくお願い致しますm(_ _)m更新、頑張らせて頂きます！ (2017年2月18日 23時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)
Sayura(プロフ) - はじめまして、Sayuraといいます。とても面白いと思ったので、この作品を私の作品で紹介してもいいでしょうか？嫌だったらすみません。更新頑張って下さい！ (2017年2月17日 0時) (レス) id: 5dae6bbc32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナガミ | 作成日時：2017年1月26日 20時
