恐怖のｷｵｸ ページ17
｢優ちゃんは何処だ｣
確かな殺気を纏って、聞いてくる。
その瞬間、冷や汗が吹き出した。
｢っ…っ……！｣
こうして、改めてそれを感じて、痛感する。
＿＿あぁ、やっぱり、普通の人なんだ。
私の四肢が、言う事を聞かずに強張る。
恐怖。
そんなものに支配されて。
この世界に来てから、こうして直に感じる事は無かった。
最初の吸血鬼との闘い。
あれは、ほんの一瞬の出来事で、殺気なんて感じる暇もなかった。
それから、今まで殺気を感じた事は無い。
一瀬グレンが刀を向けてきた時も、一瀬グレンは殺気を纏っては居なかった。
日頃、味わう事の無い恐怖。
それは、とてつもない程に私を不安にさせた。
此処に、私以外の誰かが居たら、直ぐにでも縋るだろう。
けれど＿＿生憎、今は私一人だ。
そうなる様に、演技したから。
カチカチと音を鳴らす歯を食いしばる。
＿＿自分のした事の始末ぐらい、自分でつけられる。
［青炎竜］
〈何かしら〉
何度目かの、《青炎竜》との会話。
全てを察した《青炎竜》は、仕方がない、とでも言うかの様な溜め息と共に、言葉を発した。
〈大丈夫よ。怖がる事なんて無いわ、Aさん。何かあったら、私が守るから〉
〈なっさけねぇな、主。でも…大丈夫だろ、アンタなんだから〉
二匹の《鬼》の言葉に、私は意を決して口を開いた。
｢百夜優一郎は、名古屋市役所に向かっています。貴族の、クローリー・ユースフォードを殺す為に。だから……｣
百夜ミカエラの顔を見て、伝える。
｢早く、行って下さい。貴方の大事な優ちゃんが、殺されてしまう前に｣
私がそう言うと同時に、百夜ミカエラはクルッと方向転換をした。
名古屋市役所の方へと目を向け、
｢優ちゃん、いま行くね｣
私の事など、もう忘れてしまったのか。
何も言わずに、高々とビルの屋上へと飛び、そのまま屋上を伝って行ってしまった。
吸血鬼専用の輸送機に乗らなくて、間に合うのだろうか。
と思うが、所詮百夜ミカエラは吸血鬼。
間に合うのだろう。
一人、その場に取り残された私は＿＿
｢…行きましょう、グレンさんの元へ｣
自分自身を鼓舞する様に声を上げ、パンッと両頬を叩いた。
まだ、完璧に恐怖心は取り除けていない。
こんな状態であの戦場に行けば、命を落とす可能性しか無いだろう。
だが、行かなければ。
私がこの世界に来たのは、一瀬グレンを救う為なのだから。
それにしても＿＿疑問が浮かぶ。
この恐怖心に対する、懐かしい感じは何だろう＿＿と。
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Sayura(プロフ) - ナガミさん» ありがとうございます！紹介させていただきます。お返事遅くなってしまってすみません。 (2017年2月19日 19時) (
レス) id: 5dae6bbc32 (このIDを非表示/違反報告)
ナガミ(プロフ) - Sayuraさん» Sayuraさん、コメントありがとうございます。作者のナガミです。面白い…大変恐縮でございます。Sayuraさんが宜しいのであれば、紹介して頂いても大丈夫ですので、よろしくお願い致しますm(_ _)m更新、頑張らせて頂きます！ (2017年2月18日 23時) (レス) id: 6b18d1cb3a (このIDを非表示/違反報告)
Sayura(プロフ) - はじめまして、Sayuraといいます。とても面白いと思ったので、この作品を私の作品で紹介してもいいでしょうか？嫌だったらすみません。更新頑張って下さい！ (2017年2月17日 0時) (レス) id: 5dae6bbc32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナガミ | 作成日時：2017年1月26日 20時
