2000年越しの想い ページ25
深夜だが、他のサーヴァントにバレずに行こうと思えばこの時間帯しかなかった。
ドクターの部屋をノックするが、無反応。これを何度しても、状況は変わらない。仕方ないので、乗り込むことにした。
「たーのもー」
そんな言葉を吐きながら、部屋の中央にいるドクターから僅かに聞いたことの無いようなメロディーが流れるヘッドフォンを引き剥がす。
「えっ!?Aちゃん!?寝たんじゃないの!?」
「話があって起きてた。ノックは何度もしたよ?」
「ごめんね……でも、この時間で男の部屋に来るものじゃないよ?」
困った顔をしながら目線を合わせるが、数秒後に彼は参ったと言うように用事を尋ねてきた。
「で、何?」
「単刀直入に言うね。貴方が私を月から連れて来た人?」
「……え」
明らかに動揺した表情だったが、すぐに平静を装った。
「Aちゃん、不老不死と言えども体調には気をつけなきゃ。早く自室に戻って寝るんだよ」
「聞いたんだ、マーリンさんから。貴方もキャスターだって」
「………………そう、か」
彼は目を伏せていた。どうしたのかと伺うと、ポツリと言葉を出した。
「もう後戻りはできないよ」
「私は地球に思い出なんて残ってないんだ。だから、どうなってもいい」
「そうか……憧れていた月の王女様が今、私の目の前にいるのが嬉しいんだ」
彼はやんわりと微笑んだ後、ゆっくりと姿が変わっていった。
濃い肌、白銀の長い髪の癖っ毛が特徴的な謎の男性に変わった。
「あ、貴方は?」
「グランドキャスター、ソロモンさ。実は君と同じで今まで生きてきた」
声色は同じだが明らかに別人になった彼に動揺していると、ゆっくり私に手を伸ばしてきた。
「昔寝る前に月を眺めていたんだ。じっくり見ていると、王宮の中にいる君がいた」
「いつの話……」
「君を見れば見るほど好きになって、妃の相手すら忘れるほどだった」
手が頰に当たり、びくりと跳ね上がった。まずいことになりそうな予感がして身を下げると、彼も同様についてくる。
「一度でもいいから君に会いたい、そんな思いでずっと魔法を研究しては生きていた。だから、私の魔法が成功した時は嬉しかった」
「月から私を連れてくるだけの魔法……」
「すまないけど、抱きしめさせてくれないか」
返事をする間もなく、ぎゅうと抱き付かれる。初めて他人である男性に抱き付かれたので、また動揺したが、頭をゆっくり撫でられた。
「人理修復を越えた際に、無茶をしたけど生き残れて良かったよ……」
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みょん - 設定が細かくて面白いです! (2021年10月24日 23時) (レス) @page1 id: be1f1389a2 (このIDを非表示/違反報告)
美虎都(プロフ) - 大丈夫です!のんびり待ってますね! (2017年11月15日 13時) (レス) id: 6e6a008299 (このIDを非表示/違反報告)
さうざん(菜っ葉)(プロフ) - 美虎都さん» コメントありがとうございます。エドモンさんって、性能も性格も素敵ですので、彼メインのお話を作りました。喜んでいただいて嬉しいです。更新は気長にのんびり待ってってください。(返信遅れてすいません) (2017年11月15日 5時) (レス) id: 69689cf56c (このIDを非表示/違反報告)
美虎都(プロフ) - とっても面白い 私の好きなキャラクターエドモンだからとっても嬉しい続き気になる (2017年10月29日 16時) (レス) id: 6e6a008299 (このIDを非表示/違反報告)
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