星のカービィの短編集

Drowning！(アドレーヌ) ページ15

前々からウィスピーウッズがいる森に出入りする、少女の姿を見ていた。彼女を窺っていると、キャンバスやパレットや絵の具などを、持っていた鞄から取り出して、絵を描きはじめた。
鼻歌混じりに歌いながら描く絵は、細部まで表現された風景で、遠くからでも分かるぐらいにそっくりだ。

「どうしたの？」
「え、あ、その……」
「一緒に描く？」

彼女は私に気付いたようで、私に近付きながら言葉を投げた。戸惑って彼女を見詰めると、鉛筆と紙束っぽいのを渡された。

「これね、スケッチブックなんだ。試しに何か描いてみて」
「う、うん」

厚めの表紙を捲り、開けた先に見えた白い紙に鉛筆を走らせた。筆圧が弱い曲がった線ができた。

「わかんない……」
「焦らなくていいんだよ…………あ、あたしの名前はアドレーヌだよ。貴女は？」
「A……」
「Aね、よろしく！」

アドレーヌと名乗った少女は、私にアドバイスを与えながら、先程の絵を描いている。それは、前見た時よりさらに鮮明に詳細に描かれていて、思わず息を呑んだ。

「アドレーヌ、スゴイ……！」
「そんなことないよ。あたしね、修行するためにここに来たんだ。だからまだまだだよ」

まさかこれ以上上手くなりたいというのか。私ならもう十分で修行なんてしないのに、彼女の向上心にまたまた驚きつつ、私も絵を描く。描きかけの目の前の花に、また目を向ける。花弁の大きさがバラバラで、不恰好な花だ。今にも折れそうな茎もあり、見てて落ち込む。

「良い線行ってるよ！大丈夫だよ！」
「そうかな……」
「そうだよ、落ち込まないで」

アドレーヌはもう描き終わったらしく、道具を片付け終わっていた。キャンバスには、完成した風景画があった。モデルにした風景を忠実に再現していて、目を見開いた。
……私も頑張らなければ。意気込みながら再び絵に手をつける。もう完成が近い。彼女も張り切って精のこもった言葉で、アドバイスや励ましのコメントをだす。

彼女の言葉を糧にして、ようやく終わらせた。
先程よりバランスがよい花弁と太い茎と大きな葉ができた。彼女の足元には及ばないが、前より満足いく出来だ。

「スゴイよ！良い出来だよ！！」
「うん、ありがとう。楽しかった！」
「あたしも楽しかったよ」

スケッチブックを返すが、受け取ってくれない。

「それ、Aにあげる。またあたしと一緒に描こう？」
「うん！」

アドレーヌと去る間際にこんな約束を交わしたのだ。また会いたい。


(ドリフレ化おめでとう)

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