いない(3のダークマター族) ページ2
わたしは闇から生まれた。当時はとても小さく、光の中の世界にある林檎ぐらいの大きさだった。
今も同じ時期に生まれたゼロより小さいが、彼の目玉の位置より半分下くらいの大きさになった。
「A、A」
「どうしたの、グーイ」
「おひさま、見たい」
言うとは思わなかった発言に、少し焦った。まだ近くに親的立場の彼らがいなかったので、助かった。
だが、あの会話が彼との最後の会話になった。
ダークマターに聞くと、グーイなんて知らないと言いたいような聞き返しをする。
ゼロに聞いたら、赤い1つしかない不気味な瞳にギロリと睨まれたのでそれ以上聞かないことにした。
*
グーイが失踪した数日後、ダークマターが居なくなった。
彼を最後に目撃したのは、彼の愛用の剣で素振りをしていた時だった。その時にも、短い言葉で他愛もない会話をした。多分、グーイのことと彼の機嫌を聞いていたんだと思う。まさかこれが最後の会話になるだなんて、思っていなかった。
*
ゼロが何かを闇から作り出した。それはリアルダークマターにそっくりな物質。ヒレっぽいところが濃い紫から、グーイの様な色の黄色になっていた。
「ダークマターにそっくり」
「ああ、アヤツに真似た。剣は使えんようだが」
「彼、優秀だもんね」
「……ああ」
気まずそうに返事をしたので違和感を感じたが、気のせいにした。
わたしが闇で眠っている間に、ゼロは姿を消した。絶対帰ってくると信じて、待つことにした。
*
長い年月がたったように感じた。でも誰も帰って来ない。
グーイの何も考えていないような発言や、なんやかんやダークマターがわたしの会話に付き合ってくれたこと、生まれてからずっと一緒にいたゼロ……色々なことが頭を通り抜けた。悪いことに巻き込まれたのか。
亀裂や揺れるこの闇の空間の中、悪いことを考えてしまう。
「ハイパーゾーンが崩れてる!」
「A、A!」
「グーイ……?」
腕に飛び込んだのは、程よい大きさで目玉が2つあるこ。グーイだ、間違いない。
「キミがグーイのお母さん?」
「違う、ゼロが作った」
「彼なら、さっき倒したよ」
「う、嘘」
桃色のグーイより少し大きいこは、目を閉じて大きく横に揺れた。
「A、行こう」
「もうおまえしかいないんだね」
「ここはもたない。キミも来る?」
腕の中にいる彼を優しく抱き締め、桃色に向かって強く頷いた。
「よろしくね、A」
わたしの手を強く握ってくれた。
初めて触れた手の温もりに、空っぽな胸が満たされたような気がした。
(中立な立場の闇の子と彼女が気になっていたゼロ)
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アリス - リクエスト答えていただきありがとうございました、とてもいい話でした。これからも無理しない程度に頑張ってください、応援しています! (2022年8月7日 13時) (レス) @page46 id: d52c4cdcef (このIDを非表示/違反報告)
さうざん(菜っ葉)(プロフ) - アリスさん» コメントありがとうございます、こちらこそ初めまして。感想ありがとうございます、元はいろんなキャラクターを書きたいという気持ちでこの短編集を作りました。アリスさんのご要望に添えた作品があるのであれば何よりです。リクエスト承りました、暫しお待ちください。 (2022年8月6日 23時) (レス) id: 6e309e833c (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 今日始めて見ました!様々なストーリーがあってもっと早く見つけたかったなと思っちゃいました…!リクエストですがあなたのためだと言ったら?の後日談(続き)的なのってお願いできますでしょうか?ご検討よろしくおねがいします。 (2022年8月6日 22時) (レス) id: d52c4cdcef (このIDを非表示/違反報告)
さうざん(菜っ葉)(プロフ) - 梨夢(リム)さん» コメントありがとうございます、自己満足で書き続けていますがリムさんがそのように仰ってくれるのであれば良かったです。和数的にそろそろ終了ですが、それまで自己満足で書き通していきます。 (2022年8月5日 16時) (レス) id: ce406737cf (このIDを非表示/違反報告)
梨夢(リム) - はじめまして!面白すぎです!!最高です!続き待ってます!! (2022年8月5日 12時) (レス) id: 265c125c54 (このIDを非表示/違反報告)
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