笑顔のキミが好き【千】

遠出 ページ38

暑いのは嫌だと言う千が車を出してくれて、ちょっと遠出した。

「お弁当、作ってきてくれた？」

『作ってきた･････って言っても、千は野菜と果物だけじゃん。』

「サンドイッチでもご飯でも食べるよ？」

『塩にぎり。』

「いいよ。」

連れてきてくれた所は広い公園もある。

公園って･･･暑いから嫌なんじゃないんかい。

「暑い･･･車に、いたい･･･」

呆れて千の腕を引っ張って水族館に入った。

今日の千は、帽子に全部髪を入れてメガネで変装。
私も同じスタイルだけど、ヤスの用意だけはしておいて、エクステは外す。
目元以外はメイクをしておくけど、ほとんど私の状態。

千が、少し中腰で歩くものだから笑った。

『それ、龍ちゃんのやつでしょ？』

「だって僕、シルエットで分かるって言われたでしょう。」

『あはは･･･だからって･･･千･･･ふふ･･･面白い･･･』

ボケるのは百が多いけど、千も大概ボケる所あるよね。
･･･天然か？

「でも意外と涼しくていいね。」

『クーラーも効いてるしね。』

言いながら歩く。

大きなガラスで出来た水槽や、ペンギンとか色々見回る。
中腰で歩いているのも疲れていたのか、いつの間にか千は普通に歩いていた。

後ろからゆっくり歩く千を見る。

【あー、バレてるな･･･】

周りの人が数人、千を見ている。

「A？」

『ちょっとメイクしてくる。どっか隠れておいて。終わったらラビチャする。』

言うだけ言って、化粧室へ駆け込んだ。

あと目元だけだから、そこまでかからないけど･･･

ラビチャして待ち合わせ場所に行くと、既に数人と話をしていた。

『お待たせ。こんにちは。』

「ヤス。」

「わ！ヤスさんだ！えー？デートですか？仕事ですか？」
「サイン貰えたりしますか？」
「握手してください！」

口々に言われて、握手を交わす。
すると千が笑顔でファンの子に言った。

「プライベートだからサインはなし。ここまでね。」

そう言って私の手をとって行こうとした。

『水族館に迷惑がかかるといけないから、ごめんね。』

謝ってから千に引っ張られるままついていく。
ファンの子達は、嬉しそうに手を振ってくれた。

『･･･怒ってる？』

聞くと、少し･･･と言う千。

『なんで。』

「Aとデートしたかったから。」

びっくりした。

「だから家がいいって言ったのに。」

『溶けるからじゃないの。』

「それもあるけど。」

あるんだ･･････

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