笑顔のキミが好き【千】

独占欲の有無　２ ページ3

「A･･･？」

『あ、ごめん。行こう。』

千の腕を放して私も反対側から出る。

何で掴んだんだろう私？

頭に？がたくさん。
とりあえず、生放送頑張るか。

CM撮影がヤスだったから、そのまま歌番組なのは助かる。
カオルちゃんに手間をかけさせなくて済む。

でもそろそろTRIGGER結成だよね。

それまでに自分で出来るようにしないと。

出演35分前。

楽屋に百はいない。
挨拶まわりとか色々行ってるな。

自分の手を見る。

何で引き止めたんだろう？

千と自分の手を交互に見る。

「何？」

千が笑って聞いてきた。

『んー･･･何でかなぁと思って･･･』

「何が？」

『んー？･･･うん、答えが出ないからいいや。』

「何それ。」

優しい笑顔。
さっきまでの泣きそうな笑顔とは違う。
ちょっとホッとした。

「あ、２人共来たの？おっはよー！」

元気よく百が入ってきた。

「おはようモモ。」

『おはよ、百。』

穏やかな空気が流れる。

「ヤスのCM撮影の後、ヤスが生の音楽番組なんて、メイクの手間がなくていいね！」

『うん。カオルちゃんが助かるって言ってた。あと、冬から忙しくなるから早く自分で出来るようになってって。』

「そっか！頑張って！」

百が笑顔で言う。
私も笑顔で･･････いけないいけない。
笑っちゃいけなかった。

『微笑む程度が分からない。』

むぅ、と口を尖らす。

「ふ、かわいい･･････」

ん？

百と一緒に千を見た。

千は、しまったというように口を隠す。
顔が赤い。

珍しい。
照れてる。

「何。2人して見ないでよ。」

「いや、ユキ、やっぱり･･････」

『照れてる？珍しいね。』

「いや、照れてない。」

『照れてるじゃん。』

「照れてない。」

『照れてる。』

「照れてない。」

『照れてないの？』

「うるさいなもう。照れてる･･･っ！･･･A！」

おぉ、珍しい。
千に怒られ？るのって初めて。
何か今日は千の反応が面白い。

ふと百を見ると、背中を向けて肩を震わせている。

笑ってるな。

こっちも珍しい。
普通にゲラゲラ笑うのに。

「Re:valeさん、そろそろ出番お願いしまーす！」

「はーい！」

百が返事して３人でスタジオへ歩く。

百と千がコソコソ話してるのを後ろから見る。
何か楽しそう？

やっぱりいいな。
この関係。

これで十分。

“Aを諦める”

不意に、千の言葉が脳裏をよぎる。

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