【アイナナ】 vale 9 (ページ10)

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『それに、子供の頃ワクワクしたり夢中になる物や人は、誰だってあると思うんだよ。それとも似てる感情だとも思うから、虎於くんには分かるんじゃない？』

虎於くんが覚えてるかは分からないけど、昔一緒に遊んだの時、ヒーローごっこみたいなのもやったから。

それを思い出しながら言うと、虎於くんは戸惑った様子を見せながらも頷いてくれる。

『覚えてない？昔一緒にヒーローごっこみたいなのもやったの』
「いや、覚えてる」

覚えてないのかな？と思って言った言葉に即答され、覚えてないわけじゃないことに目を見開く。
それに気づいたのか虎於くんは、さっきのような戸惑いを浮かべた表情をした。

「今も、そういうのは好きで･･･。･･･イメージじゃないよな」

『そういうの気にするの？･･･もしかしてさっき普通とか平均を気にしたのも？』

勝手にそうだろう、と思ってはいけないことのような気がして問う。
虎於くんが目を泳がせたのを、私は見逃さなかった。

「別に気にしてるわけじゃ･･･」

めちゃくちゃ気にしてるんだな。
それで、それに気づかれるのが恥ずかしそうだ。
あるある、そういう時期。

心で頷いて、口を開いた。

『･･･これは私の意見は、って意味で聞いて欲しいんだけど･･･。イメージなんて人それぞれだよ。勝手に自分の都合の良いように解釈したり、悪い意味に受け取っちゃったり。相手が深く考えずに発した言葉が自分には引っかかったり、逆もあり得るけど、気づくのが遅れたりするとタイミング逃して謝れなかったりとかもあるし』

誰だってよくある事だ。
私だってよくある。
だから誤解されることが増える。
昔がそうだったように。

『でも、自分はこうだ、って自分の中に決まってる物があるならーー好きなものとかがあるなら、イメージなんて関係ないよ。それが自分だもん。自分の好きなものは、誰かに決められるものじゃないでしょ？』

虎於くんの反応を見ると、少し難しそうな顔をしているから真面目に聞いてくれてるんだなと、ふっと頬が緩む。

『虎於くんの進路希望だって、虎於くんが行きたいって決めたところでしょ？ご両親だって認めてくれたんじゃないの？』

1番身近な、虎於くんが周りに対して口に出来る希望だろうと思って口にすると、虎於くんは意外にも首を横に振った。

「いや、まだ親には言ってない」
『えっ？海外の大学でしょ？言っとかないと諸々の手続きとか大変になるよ？』

さすがに焦った。