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しかし遂にデビューしたのか。
百瀬くんと千さん。
テレビを見終わると、切なさだけが心に残る。
食器を洗い終わってから2人のことを調べると、Re:valeは本名で活動しないらしかった。
百と千、か。
大神くんの時も、万と千、だったから、その名残かな?
大神くんの代わり、だもんね。
でも代わりには、ならないと思うけれど。
ーーファンクラブ、とかあるんだろうか。
心が、そわ、とする。
ファンクラブがあるのなら入りたい。
ひっそりと。
岡崎くんにバレない程度だと、ファンクラブが出来てからだいぶ経ってからだろうか?
推しと好きな人が一緒に活動しているなら、出来るだけ早く入りたいというのが本音ではあるけれど。
切なさはいつの間にかミーハー的な興奮に変わっていく。
その日は、一日中そわそわして、虎於くんの家庭教師をしてる時、問題を解いてる途中の虎於くんに「どうかしたのか」と怪訝な顔をさせる程だった。
『どうもしないよ?』
「その割に、凄い楽しそうだけど?良いことあったのか?」
そんなに顔に出てたかな。
緩んでいるのか分からない両頬を、元に戻すように両手で擦る。
虎於くんが部屋にある鏡を指さしたので覗くと、少し頬が緩んでる私がいた。
『推しがデビューしたからかな』
「おし?」
何それ?と言いたげな虎於くんの反応に、どう言えば適当なのか考える。
『平たく言えば、好きな人、かな。すごく応援したい人。芸能人とか有名な人とか』
「芸能人・・・」
虎於くんが急に冷めたような反応をした。
テキストの問題に再び目を落としてるから、そう見えただけかも知れないが。
『虎於くんは興味ない?芸能界の人とか会えそうだけど』
「そこまでは。スカウトされるけど断ってる」
『へぇ・・・』
問題を解いている虎於くんに、それ以上話を続けるのははばかられて、そこで話は止まった。
虎於くんの容姿なら、芸能界の人の目には充分とまるだろう。
頭も良いし運動神経も良い。
部活でのなんかの試合で活躍したらしいし、普通に男女関係なく人気がありそうだ。
虎於くんは問題を解き終わると、私にノートを見せてから口を開いた。
「Aは、その推しとやらに会わせて欲しいとは言わないんだな」
思いもしなかったことを言われて思わずキョトンとする。
『え?いや、会いたいとは思ってないし・・・』
会いたいけど会えない、という言い方が正しいけれど、そこまで言うつもりはなかった。
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作者名:miz | 作成日時:2024年2月9日 0時