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自分でモテるって肯定するって、相当自信ないと言えないと思う。
百瀬くんも虎於くん程じゃないかもしれないけどモテてた。でもモテるって肯定したことなかったな。
けどモテる彼氏を持つ大変さは少なからずわかるつもりだ。
私は、瑠璃や周りの友だちに恵まれたから、やっかみは少なかったんだろうけど。
百瀬くんを思い出して少ししんみりするも、別れた頃よりも気持ちは落ち着いている。
『じゃあやっぱり彼女は、嫉妬されたり自分に自信がなくなったりするかもね』
「どうして?」
自分の時を思い出して何となく口にした言葉は、虎於くんには理解できなかったようだ。
純粋に分からない、という視線を投げ掛けられて、その純粋さに驚く。
例えば羨望が嫉妬に変わったりするような、負の感情を受けたことがないのかな。
いや、それに気づいてないだけかな?
・・・百瀬くんも瑠璃から言われるまで、負の感情が身近にあることを知らなかっただけだったし、虎於くんも十分あり得る。
『えと、ただ嫉妬されるのならともかく、なんであんな子が、って負の感情をぶつけられる事がしんどい時があるのとか、相手や周りと比較して、劣ってる自分を感じて自信をなくすってところかな。人にもよると思うけどね』
前者は自分が体験したことで、後者は瑠璃や妹が時に言ってたことだ。
私は人と比較したりすることは少ないけど、体を使う事だけは苦手だから、自信がないという気持ちは分かる。
人と比べてというのとは、ちょっと違うかも知れないけど。
「他人と比較しても得られるものはないと思う」
『あー・・・うん、その気持ちも分かる。・・・でも比べちゃう人もそれなりにいるんだよ』
キッパリと言った虎於くんに苦笑しながら返すと、納得したのか虎於くんは
「ふーん、そんなもんなのか」
と感情が見えない様子で軽く頷いた。
『まぁ虎於くんの付き合いに、どうこう口出ししてるわけじゃなくてね』
「俺に興味ないのは知ってる」
今度は深く頷かれる。
「彼氏いるんだったな。弟から聞いてる」
気の置けない笑顔で言われ、無意識にギクッとした。
そう。
まだ弟には別れたことを言ってないのである。
気づいてそうだからっていうのもあるけど、普通に暮らしてて特に百瀬くんの話になるわけじゃないんだよね。
別に言わなきゃいけないことでもないし。
百瀬くんからは聞いてないのかな、別れたこと。
ていうか会ってるのだろうか?百瀬くんと弟。
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作者名:miz | 作成日時:2024年2月9日 0時