410 ページ4
次からは私が1人でこの家に伺うことも決まり、それまでにテキストを用意しておくことを約束して、虎於くんの家を後にした。
なんというか･･･よく言えば、流れに任せようってタイプなのかな？
悪く言えば、少し諦めが時々見えるような。
ほとんどの事柄を、任せる、と言ってくれた虎於くんを思い出しながら、虎於くんの家を見上げる。
『ねぇ弟』
「ん？」
『虎於くんって、あまり自分の意見言わない？』
「そんなことないよ。普通に思ってること言われてると思う」
『･･･そう･･･』
じゃあ勉強の面だけなのかな。
家庭教師が何人か変わってるなら、それぞれのやり方に一旦は合わせてみたりするかもしれないし。
それが本人と合う勉強の仕方かは分からないけど。
その日は、臨機応変にやってみれば良いか、という考えに着地して、弟と帰った。
そうやって大学院に通いながら、虎於くんの家庭教師をする日々が始まった。
虎於くんが夏休みに入ってから家庭教師の時間が少し増えたおかげか、8月下旬頃には、虎於くんとお互いにフランクに話せるようになっていた。
「出来たよ」
『さすが早いね！じゃあ次の時までの宿題はねー･･･』
虎於くんの夏休みがもうすぐ終わるので、おさらいのテストをやってから、テキストから宿題を出す。
「いつも思うけど、Aって学力が飛び抜けて高いな」
虎於くんが、宿題の範囲をノートに記入しながら言った。
『うん？そお？』
「ああ。少なくとも、今までの家庭教師よりは勉強を教わっている実感があるし身についてる気がするから助かる」
『そう･･･？』
少しだけ気まずい気分になる私に、頷く虎於くん。
気まずい理由は、家政婦さんから今までの家庭教師の話を聞いた時があったからだ。
虎於くんの彼女になろうとする人が多かったとか。
そりゃあ家庭教師やめる人が多いはずだよ、とか、勉強にならないよね、とか思うよ。
最初はちゃんと家庭教師をしてたのかもしれないけど、結局は仕事をしてなかった人がいたわけだから。
つまり、虎於くんと付き合おうと露ほども思わない私は、きっと虎於くんにとって、勉強に集中したい時に集中出来るから助かるんだろう。
『勉強にならない程モテるって大変だね。彼女も気が気じゃないよね』
「どうだろうな。モテるっていうのは否定しないけど」
ノートをパタンと閉じた虎於くんは、モテるということに対して謙遜もせずに受け流して肯定してきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 581人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：miz | 作成日時：2024年2月9日 0時
