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「練習場所はあります。今しないのは事務所の方針ですのでお気になさらず。お騒がせして申し訳ありません」


和泉くんは表情も変えず、淡々とした物言いで答える。

練習場所があることにホッとしつつも、こうもきっぱりと言われれば潔く引っ込むしかない。


『ごめんね、四葉くん。事務所の方針なら、ダンス部の先生に聞くことが出来ないかな・・・』
「ええー!?・・・いおりんが余計なこと言うからだぞ」
「余計なことではありませんよ」


教卓にしがみつくのをやめた四葉くんは自分の鞄を肩に乗せ、和泉くんを睨んで文句を言いながらも帰ることにしたようだ。


「せんせー、また明日なー」
『はーい、また明日〜』
「さようなら」
『はい、さようなら』


手を振り、答案を持って職員室へ向かう。
さっきあったテストの教科の、担任の所に持って行って渡した。


自分の席に座り、定期テストの採点を始める。
明日返すクラスのは終わってるから、明後日返すクラスの分だ。

自分が用意した答案と生徒の答案を見比べて、赤ペンで丸付けして点数を書いていく。
間違ってる所は、チェックもつけたりしない。
私が高校生の時は、チェックついてたけどな。

この数年間の間で、色々変わっていく。
妹が好きなキャラクターはクマからネコやシロクマに変わったし、好きなアイドルは増えたし。
スーパーの買い物で当然のようについてきたビニール袋は、有料に変わってエコバッグが必須になったし。

アイドルは遠い存在なのが当たり前だったけど、身近に感じられるアイドルの方が人気が出てきたし。
・・・いや、TRIGGERは身近な気はしないよね。

ぼんやりとした思考が止まって、思わず手も止まる。
いや、気にしてる余裕はない。
採点を終わらせなくては帰れない。

再度答案に向き直る。

ーーん?これ、和泉くんのだ。
つけた点数は、クラスの中でも最高得点。
さすがとしか言い様がない。

クラスの中で“パーフェクト高校生”と呼ばれているのは知っている。
元々は自称だったのか、というのは私にはわからないけど、言われるだけある。
頭もいいし運動神経もいい。

でも友達が少なそうなんだよね。本人気にしてる風は見られないから、そこまで重要視してないけど。

点数を書いた答案を、採点を終えた答案の上にぴらっと置く。
席順に答案が積み上がってるので、次は四葉くん。

勉強をしているのか、する時間があるのかはわからないけど、勉強が苦手なのは態度や結果で一目瞭然。

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作者名:miz | 作成日時:2024年2月9日 0時

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