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426 (3年半後ーー) ページ20

3年半後ーー

出来て数年しか経っていない建物の廊下を早歩きで通り、目的の部屋の前で止まる。
二回ノックをして、どうぞと返事があると、息を整えてからガラッと扉を開けた。


『失礼します』


中に入ると、合わせて3人の男性と女性がこっちに顔を向ける。
立ったまま顔をこちらに向けた年配の男性が、ふっと目尻を下げて微笑んだ。


「急がなくてもまだ、いらっしゃってないよ」
『そうなんですね』


息は整えたはずだが、急いで来たのはバレているらしい。
これまた年配の女性も微笑んで、ご自分の前髪を指さす。

私の髪の毛に乱れがあったからバレてたのか!とハッとして頭に手をやり、感覚で整える。
女性に、髪が乱れてないかと目で訴えると、頷き返してくれた。

ちょうどその時、扉をノックする音が聞こえる。
見えなくても分かる。事務員さんだ。


「転入生が見えました」

「どうぞ」


校長先生の言葉に、ガラッと扉が開いた。



ーー虎於くんの進路を再び決めてから3年半。
その間、主に進路面での変化はあった。

妹が短大に入る頃に一緒に住むことになり、次の年に虎於くんの受験も合格した事。弟が楽団に入ったこと。
同じ頃に私も、高校の教師になることが決まった。

元々、人のサポートや事務や経営面を勉強してきたこともあって(芸能プロダクションのサポート良いなとか思ってたし)、芸能界の人が多いという学校の、教師になった。

芸能事務所に行けば百瀬くんに会うことがないとも言えないし、百瀬くんと別れてから少なくとも5年は会うわけにいかないから、出来れば避けたいという想いもあったし。
今までなんだかんだ人に教える仕事しかやってこなかったので、得意分野を活かせるのは今の仕事だろうなという考えもあったからだ。



校長室に入ってきた転入生は、2人の男子だった。


「こちらは和泉くんと四葉くんのクラス担任の、A先生。A先生、和泉一織くんと四葉環くん」


和泉くんは真面目でクールそうなイメージの黒髪の子。
四葉くんは、背が高くて気だるそうな雰囲気を醸し出してる子。髪の毛の長さは、以前の千さんを彷彿とさせた。

校長先生に紹介されて、目の前の2人に挨拶をする。


『AAです。よろしく』

「はい。よろしくお願い致します」
「うす」


礼儀正しく挨拶を返してくれたのは和泉くん。
ペコッと頭だけで会釈しながら返してくれたのは四葉くん。

最初の印象通りのそれぞれの答え方に、思わず頬を緩めた。

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作者名:miz | 作成日時:2024年2月9日 0時

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