425 ページ19
家庭教師の日数が減るとは言っても、虎於くんの進路先の大学をピックアップしとくという約束は先ず果たさなくてはいけない。
どこが良い?
教授が、使って良いと言ってくれたパソコンの前で腕組みをし悶々と考える。
国内ならどこでもって言ってたよね。
折角なら虎於くんが興味を持つ所がいい。
けど本音では、留学先以外は目に入っていない。
『ん〜・・・』
カチカチ、とマウスをクリックしてはスクロール。
留学先の大学と国内の大学を見比べる。
『ーーん?』
見ていた所は、学部と学習内容。
『ふーん?』
思わず、にやり、と口元が緩んだ。
・
久しぶりの虎於くんの家庭教師の日。
おじゃましますと足を踏み入れた玄関で、虎於くんが気まずそうな表情で待っていた。
『こんばんは。国内の志望校、いくつかリストアップしてきたから見てくれる?』
私がニコッと笑顔を見せると、虎於くんの目が見開かれる。
頷いてくれた虎於くんに案内されて、部屋に入った。
「ーーこれ・・・」
私が渡した、いくつかの大学の資料をプリントアウトしたものに目を通した虎於くんが、驚いたような声を上げる。
想像通りの反応に、思わず口端が上がった。
虎於くんの後ろにいる私を、虎於くんが振り返る。
少しだけ笑みが見えるのは、気のせいじゃないと思いたい。
『留学したかった大学に、出来るだけ近い学力と学科項目があるところに絞ってるよ』
虎於くんの志望校を国内に変えるしかない。ーーとは言っても、ただ黙って従う気はない。
まだ、出来ることはある。
この前までの第一希望には届かなくとも、そのうち虎於くんが会社の手伝いをしたいと言った時、又はその気持ちが本物だと虎於くんのお父さんやお兄さんが分かった時、最終的には、手伝えるための備えがあれば良いのだ。
それが、虎於くんの最初の願いなのだから。
『これなら、虎於くんの最初の希望も、お父さんの希望も、叶えられるでしょ?』
「まだ諦めてなかったのか・・・」
『虎於くんがもういいって言ったとしても、私には良くないの。私のワガママだと思って、この中から進路先選んで』
虎於くんが呆れ混じりの溜息をつく。
いや・・・苦笑に変わった。
「は・・・っはは・・・、A、考えたな」
『学習内容が同じ所も少しあったから』
全部じゃないけど、と付け加える。
虎於くんは、資料を広げて指をさした。
志望校が決まり気まずい空気もなくなり、ホッと一息ついて、勉強を始めた。
581人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:miz | 作成日時:2024年2月9日 0時