【アイナナ】 vale 9 (ページ18)

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「他の人とは違う。･･･百瀬くんはお姉ちゃんが好きでしょ」
『ああ･･･うん。そうね』

おそらく。
それでも芸能界には、心惹かれる人は溢れるほどいるだろうから、いつまでかは分からないけれど。

「じゃあ、アイドルにガチ恋のまま、お姉ちゃんは変わらないでね」

アイドルにガチ恋。

その言い方に思わず苦笑する。

『何も知らない人からすれば、絶対に心配される案件だね』
「いいの！･･･百瀬くんが･･･お姉ちゃん以外の女の人を、家族に紹介したとか聞かない限り、そのまま変わらないで」
『ああ･･･瑠璃に聞けば分かるもんね』
「そう！いくら家を出たって言っても、大事な面では紹介すると思うんだよ」
『･･･うん。･･･そうだね』

少しそれを想像して、ズンと気持ちが重くなった。

そういうことまでは想像しなかったな。
百瀬くんの状況とこの先を考えて、彼女がいない方がいい、って1番に思ったから。

“嫉妬はしないよ”

付き合ってる時に百瀬くんが言ってた言葉を思い出す。

これからを思って、私には無理そうだな、と溜息が出た。

･

妹の試験も終わり、妹が実家に帰った日。
日中にお父さんから電話が来た。
講義中に着信があったので、昼休憩の時に折り返した。

珍しい。
大抵電話してくるのは夜だったのに。

《A！虎於くんとケンカしたんだって！？》

どうやら焦ってるようで、早口だ。

『あ、うん』

うどんを、ちゅるんと口に入れながらも、けろっと答えるものの、お父さんまでケンカしたことが伝わってるって、どういう状況？と頭の中で？が飛び交う。
いや、うちのお父さんと虎於くんのお父さんは仲が良いけど。

『虎於くんから聞いたの？』
《まさか！虎於くんのお父さんから！どんなケンカした？内容は知らないって言ってたけど、家庭教師を辞めてもらおうかまで考えてるみたいなこといわれたんだけど！》
『えぇ･･･？』

虎於くん、自分の父親にケンカの内容話してないの？
てか親まで介入してくる程の事なの？

うーんと眉間に皺を寄せるも、私が親の介入なしと判断するからと言って、虎於くんの家も親の介入なしと判断するとは限らない。

親同士の話までが浮上した以上、事のあらましを話すことにした。

その結果、次の家庭教師の日に謝りに行く事が決定し、虎於くんの進路先は海外にすることは出来ず、国内の大学にするなら家庭教師の日数は少なくて良いという事になってしまった。