【アイナナ】 vale 9 (ページ11)

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海外の大学を受験するにあたって、入学時期が違うし制度も違うから、他の高校2年生と比べて諸々の手続きを前倒しでしなくてはいけない。
来年の今頃は願書提出済みだろうし、それにむけて英検とか必要な試験はちょっとずつ受けているみたいだけど･･･

海外で住むところは、話を聞いていればありそうだけど、結局は親の了承がいるだろう。

『ちゃんと話してね？』

虎於くんは、わかった、と深く頷いてくれた。

虎於くんの家からの帰り道、そういえば妹の受験はどうなってるんだろ？と頭を傾げる。
来年の春には一緒に住む予定だから、色々やってるはずなんだけど。

気になって実家に電話をすると、お母さんの明るい声がスマホから聞こえた。

《そうそう！そろそろ電話しようと思ってたのよ！》

声の大きさに、思わずスマホから耳を離す。
すぐに声のトーンが普段通りに戻ったので、スマホを耳に近づけると、受験の日のために妹が一時的にこっちに泊まりに来るとの話を聞いた。

週末だと聞いて、家に帰ってから弟と、妹をどっちが迎えに行くかと話をする。
弟の方が都合が良かったので任せることにした。

夏休みの時に実家に帰らなかったから、妹と会うのは久しぶりだ。
百瀬くんと別れた事を話してないから、話すべきなんだろうな。怒られるかもだけど。弟にもそろそろ言わないと。

百瀬くんとの付き合いを応援してくれた妹に対して、少しだけ申し訳ない気持ちになりながらも夕飯のお弁当を口にした。

・

私の夏休みも終わってしばらくして(夏休み中も何回も大学には行っていたが)妹がやって来た日。
家に帰ると、温かい食事がテーブルに並んでいた。

「お姉ちゃん、おかえり！」
『妹！ただいま～。ぅわぁ～･･･手作り料理だ～』

思わず目から滲みでる涙。
妹の眉間に皺が寄った。

「お兄ちゃんにも言ったけどさ、何、2人とも！冷蔵庫にほとんど食材ないし、何食べてんの！？」
「え、だからお弁当。買い物してる時から言ってたでしょ」
『うん、お弁当』
「買ってばかりじゃ体に良くないよ？お姉ちゃん、折角料理覚えたんでしょ？」

お玉を私に向ける妹。
マイク代わりだろうか？

そっとお玉に向かって口を開く。

『えと、毎日は大変で。時間もかかるし』
「マイクじゃないから！」

お玉を引っ込めて苦笑いする妹。
あ、そうなの？と呟きながら元の位置に顔を戻す私。
瞬間、妹が、堪えきれないようにブッと吹き出した。