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『やっぱり足りない···』


ひとしきり泣いた後、口をつけられなかったウーロン茶を2杯分飲み干してから、拾い集めたパワーストーンをゴムテグスに通しブレスレットとして完成させたものの、どう見ても自分の手首よりも小さく仕上がった。

つまり、パワーストーンの数がいつもより少ないのだ。

結構遠くまで散らばっていたけど、一通り探したはず。
でも足りない。

散らばった後もずっと手に持って玄関とか行ってたから、そっちかもと探すも見つからない。


「ただいま〜。···姉ちゃん、なにしてんの?」


目を皿のようにして床に這いつくばった私を、帰ってきた弟が見下ろしてくる。
見上げるとバチッと目があって、その瞬間に驚いたように目を丸くさせた弟を見て、しまった!と床に視線を落とした。

泣きすぎた私の目は、腫れてるか赤いに違いなかったから。


『ブレスレットのテグス切れちゃって。パワーストーン散らばったの探してるんだけどなくて。···んー···足りない分買いに行こうかな・・・』
「何個足りないの?」
『3個・・・か4個・・・かなぁ?多分それ位』


私が泣いた後だと多分気づいたはずなのに、知らないふりしてくれる弟、ありがたい。
今はまだ、百瀬くんとのこと、口にしたくないから。


「服のポケットとか入ってないの?散らばったならどっか入ってる可能性もあるんじゃない?」
『ああ···確かに···』


座って自分のポケットを探る。
入ってない。

あ。
百瀬くんのポケットとか。
抱き締められた時に私、持ってたから落ちたかも?

その考えに至ると、もの悲しい気分が自分を襲う。

けれど、よし、と立ち上がって気持ちを切り替えた。


『明日買って来よう。見つかんない物は捨てたと思えば!』
「そんなんだから次々と物が増えるんだよ・・・シャーペンとか消しゴムとか・・・」
『弟も部屋散らかってるでしょ!人に言えないじゃん』
「姉ちゃんは物が増える散らかり方だろ?なくなったのは思い当たるまで探すよ」
『部屋は散らかってて私じゃ弟の部屋の物、どこに何があるか分からないけど、物は大事にするよね、弟は。でもさ、小学生ん時、鉛筆がこーんなちっちゃくなるまで使ってたよね。鉛筆削りで削れなくなるまで』


人差し指と親指で、2〜3センチくらいの長さを表すと、小学校の時だけだから!!と恥ずかしそうに返してくる弟。
どうでもいい言い合いをしてる事にホッとしつつ、それでも心の隅は重く、時間は過ぎていった。

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作者名:miz | 作成日時:2024年2月9日 0時

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