【アイナナ】 vale Side百 (ページ8)

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「告白してうまくいかなかったら？気まずいし、遊ぶのも今まで通りにいかないよ。それは百だったり私だったり、Aだったりするんだよ。･･･私、それは嫌だな」

憂いを含んだような、寂しげな瞳。
その思いは真っ直ぐ伝わって、言葉が出ない。

姉ちゃんはパッと表情を変えて、なんでもないような顔でこっちを向く。

「あ、うまくいくならいいんだよ？」
「･･･うん」

うまくいくかなんて分かんない。
ただ、好きだと気づいて、その気持ちを伝えるのに、姉ちゃんが不安になるなんて思ってもみなかった。

「姉ちゃん」
「ん？」
「Aさんって、好きな人とか付き合ってる人、いんの？」

いるのならきっと諦めがつく。
好きだって気づいたばかりだし、まだ深く付き合ってはいないし。

Aさんとオレの関係は、姉ちゃんを通してのもので、家庭教師と生徒みたいなもんだから。

それにAさんや姉ちゃんが笑っていられる日が続くなら、それが一番だ。
姉ちゃんなら知ってると思って聞いたのに、姉ちゃんは気まずそうな顔をした。

「あー、わかんないんだよね～」
「そういう話しないの？女の子ってそういう話好きじゃん」

「んー、なんていうか･･･A、そういう話題苦手そうな顔してたんだよね。だから聞いたことないな」
「そうなんだ･･･」
「あ、でも･･･」
「ん？」

姉ちゃんが何かを言おうとして、ハタと止まる。
オレを見てるのに明らかにどっか違うとこを見てる目。

なんか考えてんのかな。
姉ちゃんが言おうとしてる続きを待ってる間にタオルを洗濯籠に入れて戻ると、姉ちゃんが1人、なるほどそういうことか、と納得している。

「何だった？」

さっき考えていたらしい事の答えを聞けると思って聞く。
Aさんの恋愛の話だと思うと、ちょっと緊張した。

「あ、Aって前の学校で、声だけが好きだった先輩いたんだって」
「声だけが好きだった？性格とか格好良かったとかの好きに加えてじゃなくて？」

あんま聞いたことない好みだな、と漠然と思う。
理解しようと口から出た疑問に、姉ちゃんは首を横に振った。

「そういうのは全くないんだって。初めて会った頃に聞いた。好みのタイプとかは今度聞けたら聞いとくよ」
「えっ？苦手そうなんだよね？無理に聞かなくていいよ？」
「分かった分かった」

一抹の不安を覚えながらも、姉ちゃんに任せ、Aさんと距離を縮めようとか思わないようにした。