【アイナナ】 vale Side百 (ページ5)

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『何冊か買ってくる。苦手なのは遡んなきゃいけないから、これじゃ頑張っても空回りするだけなんだよ』
「じゃあ母ちゃんに言ってお金出して貰う！」

後日、母ちゃんが出した参考書代を持った姉ちゃんと、Aさんが本屋で買ってきてくれた。
姉ちゃんもAさんに選んで貰ったみたいだけど。

そこから、Aさんとの勉強が始まった。

基本的に勉強は姉ちゃんの部屋で。
姉ちゃんは自分の学習机でやって、Aさんとオレは部屋の真ん中のテーブルで教えて貰う。基本は教科書で。

めちゃくちゃ分かりやすい。

そんで全く嫌な顔も呆れたような顔もしないし、怒られない。
いや、家族じゃないからかもしんないけど。

サッカー練習や試合もある中、Aさんから出された宿題や勉強すんのは正直しんどかったけど、Aさんと距離が近くなった気がして、なんでも頑張れる気がした。

「お祭り？神社の？」
「そう！夏休み初日でしょ？行くの～」

姉ちゃんがAさんとお祭りに行くらしい。

オレも友達と行く約束をして、お祭りに行った日にかき氷の列に並んでる時、初めてAさんの妹に会った。

小学生って可愛いな。そんでめちゃくちゃしっかりしてる。

Aさんにそっくり。

この時オレはまだAさんのことを、スポーツが苦手で美術が個性的で勉強がめちゃくちゃ出来る、しっかりした人だと思ってた。

なのに･･･

小学生の妹とケンカするAさん。
新鮮。

そんで、見たことない表情。
家族にはあんな顔をするんだ。

何だかいつもよりも身近に感じて笑みが漏れる。

いつも家族の話とか聞いてて思ってたけど、愛情深い人なんだろうな。
愚痴を言いつつ楽しそうに見えるのは、愛情の裏返しだろうから。

友達とかき氷を受け取ってから、姉ちゃんたちの所に行こうとして足を止めた。

姉ちゃんとAさんと妹ちゃんの所に、見たことない男子2人組がいる。

「･･･春原？」
「ん？･･･この辺で食べよっか！」

友達は頷いてくれるものの、気になって仕方ない。他の友達もこっちに来たから、皆で集まりながらもチラチラ姉ちゃんとこを見る。

姉ちゃんがすぐに逃げなくて話してるなら知り合いかな。同級生？
でもAさん無表情。

あ、引っ越してきて3ヶ月経ってないんだっけ。
じゃあ部活の人とか違うクラスだけど同級生とかあり得る。

笑顔の姉ちゃんがピリピリしてんのも気になる。
だからと言って割り込むのもおかしいし。
どうしようか。