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「あ！Aさんの弟の！えっと弟くん！で良かったっけ？」
「あ！･･･えと」
お互いに指さし、弟くんが頷くも言葉に詰まってる。
「春原百瀬！百でも百瀬でもモモちゃんでも好きに呼んで！」
オレの名前が咄嗟に出なさそうな空気を読んで、自分から名乗った。
一度しか会ってないもんな。
キョロと周りを見渡すと、何人か知ってる人はいる。
「弟くんの友達は同じクラス？合格発表ん時、見かけたって言ってたじゃん」
「うん。まだ来てないみたいだけど」
弟くんがクラスを見渡す。
その時、横からオレの肩を掴んで組んでくる友達やらが集まってきた。
弟くんの友達も来て自己紹介しあう。
よろしく！って言い合って各々決まってる自分の席についた。
入学式が終わってから、弟くんに、母ちゃんが挨拶したがってた事を話す。
「母さん、門のとこで待ってるはず」
「ほんと！？じゃあ母ちゃんもいるだろうし、挨拶さしたげてくれる？」
「多分大丈夫じゃない？」
弟くんと揃って門の方へ行けば、母ちゃんが待ってるのを見つけた。
「あ、母ちゃ･･･」
「あれがうちのー」
オレが手を挙げて弟くんが指さして、ほぼ同時に言葉を発する。
母ちゃんたちはオレたちに軽く手を挙げかけてから隣に気付いたようにお互いに顔を見合わせ、オレたちも顔を見合わせる。
一瞬の後にふっと笑い合うオレたちをよそに、母ちゃんたちは距離を縮め、挨拶が始まった。
数分後ーー
「母さん達、帰んないのかな」
疲れたような表情で、門近くの壁際を背にしゃがむ弟くんが呟く。
オレは友達とじゃれ合いながら顔を弟くんに向けて、にぱっと笑った。
「あれはしばらく無理だよね。うちの母ちゃん話すんの好きだからさ」
「あ、うちもうちも」
「先帰っちゃう？」
「そうしようかな。待ってても退屈だし」
弟は、知り合ったばかりの人たちとじゃれ合ったりして遊ぶのは苦手なようだ。
人見知りなだけかな？
でもめっちゃ良い子な気がすんだよね。
いや、元々悪い人なんかいるわきゃないんだけど、そういうんじゃなくて、もっと仲良くなれそうな気がする。
優しい子だっていうのは、合格発表の時に知ってるし。
「オレも一緒に帰っていい？」
「うん」
弟くんが立ち上がって、オレも友達と手を振る。
母ちゃん達に先に帰ることを伝えると、お茶してくるわ、と返された。
相当意気投合してんね、と笑いながら、弟と途中まで一緒に帰った。
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作者名：miz | 作成日時：2023年12月31日 23時
