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「そう・・・。家庭教師、続けて貰う?」
「え!?」
「ただ、お返しを今後しないといけないし、Aちゃんのお母さんがどうおっしゃるか分からないけど」
母ちゃんが頬に手を当てて唸ってる。
かくいうオレは目を丸くして放心していた。
いや、願ってもないけど!高校を待たずしてAさんに会えんの、願ってもないけど!!
姉ちゃんは?どう思うかな?
オレの期待と心配をよそに、母ちゃんはAさんちに電話して話をつけてる。行動が早い。
姉ちゃんが帰ってきてから、母ちゃんがウキウキしながら今日の話をする。
姉ちゃんは眉間にしわ寄せたけど、取りあえず話をするのにAさんを連れてくることを了承してくれた。
「百が言ったの?」
「違うよ!?母ちゃんが答案見て言ったんだよ!?」
明らかにオレを睨んでる姉ちゃんが納得してくれたのは、Aさんが家庭教師の話を受けてくれた時だった。
11月。
Aさんから修学旅行のお土産を貰った。
匂い袋だ。
オレの目の色に似てるからと言われて舞い上がる。
わざわざオレに買ってくれたことが、めちゃくちゃ嬉しい。誕生日祝いも兼ねてらしいけど、理由なんてどれでも、嬉しいことに変わりない。
Aさんがくれた、ということが大事なんだ。
Aさんのオススメに倣って、オレのスポーツタオルが入ってる所に匂い袋を挟んでしまった。
サッカーやった時、タオルから良い匂いすんのってちょっとテンション上がるかもって理由。
サッカーすんのが余計に楽しみになった。
Aさんから勉強教えて貰う最終日。
教えて貰った後、お礼と共にお願いをした。
ありきたりだけど!それでも!
「あの、それでお願いがあるんですけど!」
少しだけ首を傾げるAさん。可愛い!
いやいや、そうじゃなくて!
「合格したら聞いて欲しくて!」
キョトンとするAさん。
かと思えば、プッと笑った。
『あはは!合格したらご褒美ってこと!?それアニメとか本でめっちゃ見たり聞いたりするやつだけど、本当に言う人いるんだ!』
笑われてホッとする。嫌そうじゃないことに嬉しくなって、こっちまで笑顔になった。
『いいよ。受かったらね』
「あ、あと!」
『ん?』
「一緒に合格発表、見に行って欲しいんです!」
受かったら、2人で出かけたいって言うつもりだ。
それでこの想いにケリをつけられたら。
たった1度。出かけられたら。
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作者名:miz | 作成日時:2023年12月31日 23時