【アイナナ】vale5 (ページ9)

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「みんな見てないから、ちょっとだけ」

いたずらっ子のような笑みで言われて、後ろ手に指が絡む。

ドキッとして、でもみんなに気づかれたらちょっと恥ずかしいなとか少しハラハラしてると、百瀬くんの手が止まった。

『うん？』
「･･･なんか･･･ブレスレット？つけてる？」

手首から手元に下がってきたブレスレットに触れたみたいだ。

ブレスレットってあまりつけないから珍しいんだろう。
いつもネックレスとかイヤリング位だもんね。

『うん。今日のお昼、お店で作ったの。貝殻拾ったのとパワーストーンで。瑠璃も作ったよ』

後ろにあった手を前にやる。
みんながやってる花火の光が少しあるお陰で、ぼんやりとブレスレットの色が見えた。

「グラデーションがきれいでかわいいね！ピンク好きだっけ？」
『この石見た時、百瀬くん思い出したの。目の色がこんな感じでしょ？』
「え、オレのこと大好きじゃん。めちゃくちゃ可愛いことすんね」
『あはは、だって好きだもん』

ブレスレットを見せながら笑顔で会話。
傍から見ても、めっちゃイチャイチャしてるような感じだろうけど、誰もこっちを見てる素振りはない。

けど百瀬くんは、私の言葉の後、目を丸くして固まってしまった。

どうしたんだろう？
普段とそんなに変わらない会話だよね？

『百瀬くん？』

百瀬くんが、手で鼻から下を覆って少しうつむき加減になる。
とっさに耳を傾けた。

「もー、そういうの言われたら、めっちゃちゅ～したくなんじゃん」
『え･･･』

思わずその距離で百瀬くんを見てしまい、すぐに百瀬くんが目を閉じる。

そっと触れ合う唇。

すぐに離れるものの、余韻は残る。

百瀬くんがハッとしたようにバッと自身の口を覆うと同時に、私も我に返って顔に熱が集まった。
TPOが頭をよぎって周りを見渡す。

やっぱり誰も見てないけど！
でもいくら誰もこっちを見てる素振りはなくとも、人がいる所ですると思わなかった。
しかも周りにいるのは知り合いだし！
百瀬くんに至っては、これからも付き合いのある人たちばかりだし！

『･･･っみ、みんないるのに･･･』
「だ、だって！好きって初めて言われたんだよ！？めちゃくちゃ嬉しいに決まってんじゃん！そりゃ･･･」

百瀬くんが小さく、ちゅーしたくなっちゃうじゃんか、と呟いた。

思わず大きく目を見開く。

『気づいてなかった･･･これからちゃんと伝えるようにする』

すると百瀬くんが慌てたように両手を横に振った。