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着いた時には、百瀬くんがサーフボードで何回目かの海に出るところだった。
「こんにちは。弟にボード貸して貰えて嬉しいです。ありがとうございます」
瑠璃が色黒の人に声をかける。
さっきうまく波に乗ってて、回転とかもしてて、めちゃくちゃ上手だった人だ。
「ああ、弟さんなんだ。いや、好きな人にかっこいいとこ見せたいんだって。男だね」
「へえ･･･」
瑠璃がニヤニヤして、そう言ってますよ？と私の腕を肘でツンツン突く。
本当にからかうの好きだよね。
目の当たりにすると微妙そうな顔するのに。
むう、と唸るものの、さっき聞いた言葉に嬉しさが込み上がってくる。
好きな人にかっこいいとこ見せたい、か。
充分、百瀬くんはかっこいいと思うんだけど。
そう思って海に視線をやる。
百瀬くんが、ボードにうまく乗った。
『･･････あ！！』
ボードから両手を離して、うまく波に乗ってる。
凄い！
そんなにたくさんの時間、乗ってるわけじゃなかったのに！
わああ、という少しの歓声。
海から上がってボードを持って戻ってきた百瀬くんに、パラパラと少ないながらも送られる拍手。
照れたように笑って返す百瀬くんは、私の方に顔が向くと、ぱっといつもの笑顔に変わった。
「Aさん！見た！？オレ、サーフィン出来たよ！」
『うん、見た！格好良かったよ！』
「ホント！？やった！」
笑顔でガッツポーズ。
逆に可愛いんだが。
百瀬くんは笑顔のままお礼を言って、サーフボードを色黒男性に返している。
格好いいって言ってもらって良かったねと言われてる百瀬くんが、嬉しそうに頷いてるのを横目で見てると、百瀬〜！という声が聞こえて、そっちに顔を向けた。
こっちに駆けてくる数人の男子。
サッカー部だ。
「百瀬だったんだ！サーフィンでここら辺拍手されてたの！」
「おう、ちょっと借りて！」
「凄えじゃん！」
じゃれ合う百瀬くんたち。
その中の1人が、あっちで遊ぼうと言った。
チラッと私を見る百瀬くん。
さっき、私と一緒にいたいって言ってくれたけど、高校の友達と一緒に合宿だという経験は滅多にないよね。
それに私は、夏休みに百瀬くんと2人で海に行ってもいいわけだし。
そう思って、笑顔で頷く。
『行っといでよ。大勢で来ることは中々ないし。今度2人で海に行けばいいでしょ？』
百瀬くんは少し考えるように、視線を友達に向けていたけど、すぐに私に向いて笑顔で、わかったと頷いた。
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作者名：miz | 作成日時：2022年10月19日 13時
