【アイナナ】vale5 (ページ50)

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初めて親と離れてで弟と2人の年越しだし、気にしてくれているのかな。

『いいよ。じゃあ弟に聞いてみるね』
「うん！」

百瀬くんがホッとしたように笑う。

ありがとうとお礼を言うと、こっちこそ！と笑顔になる百瀬くん。
その日帰ってから弟に聞くと、意外な返事が返ってきた。

「あ、ちょうど良かった。友達と年越しするから、姉ちゃんも百瀬と年越しすれば？って、今日言おうと思ってたんだ」

『ーーえ』

洗濯物を適当にたたんでいた手が止まる。

誘われたから良かったものの、誘われなかったり、もし私が誘っても断られたりしたら、ぼっちの年越しだったのでは？
それはそれで仕方ないけど、寂しい。

『一緒に過ごせる人がいて良かった･･･』
「全国大会がないから百瀬と一緒に過ごすだろうなって、こっちは思ってたってのもあるよ」
『あ、そうなの？』
「そうじゃなきゃ友達と一緒に出ないって」

自分の分の洗濯物を持った弟は、なんでもないような表情で自分の部屋に入っていく。
私が1人かもしれなかったら家にいてくれたのか、という気持ちが見えて、思わず笑った。

部屋に入ってから百瀬くんに、弟との話をラビチャする。
瑠璃も大学の友達と初詣に行くらしく、百瀬くんと2人で初詣に行くことが決まった。

29日の親と妹の引っ越しの日ーー荷物が全て家から運び出されると、家族全員で食事をする。
いつもめっちゃ喋る妹が、一切喋らない。

「そういえば2人共、マンションの一室を貸してくれた人とは会ってないね」

お父さんの言葉に弟と目を合わせ、同時に頷く。

「今、年末だし忙しいらしくて時間が取れないけど、時間が取れたら食事でもって仰ってくれたから、その時は出張でこっちに来るから、その時は一緒に食事しよう」

「えー？お母さん会えないの？社長さん自慢の息子さん」
「そのうち会えるから。大きくなっただろうなぁ」
「そうね〜、Aのこと大好きだったけど覚えてるかしらね〜」

なんやかんやと両親だけで思い出話に花が咲いている。

私もちっちゃい子は覚えてるけど、もう10年以上経ってるから、だいぶ大きくなってるんだろうな。

幾度となく思い出してるその子を、頭に浮かべながら食事を進める。

妹に話を振ったりするも、妹の反応はない。
両親と弟と顔を合わせて、かける言葉も見つからず、結局最後は妹の号泣を見ることになった。

もらい泣きをして、春休みはそっちに行くと約束して見送った。