【アイナナ】vale5 (ページ5)

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変な誤解をされたくはないなと思って口を開こうとする。
私が言葉を発するより前に、百瀬くんがスクっと立ち上がった。
思わず見上げる。

「ちょっと行ってくる〜！」
『え！？』

言うが早いか、明るい声で百瀬くんは海の方へ走って行く。

太陽の光が百瀬くんの顔にあたって反射してたから、眩しくて表情は分からなかったけど、明るい声だったし楽しそうな声に聞こえたし、誤解はしてないかも。
いやでも聞かなきゃ本当のところはわからないよね。

少しだけ迷っていると、瑠璃が私の背中をパシッと叩いた。

『痛･･･』

ラッシュガードを着ているからそこまで痛くはないけど、瑠璃を軽く睨む。
瑠璃がニヤッと笑った。

「私達もあっち行こ！」

かき氷の最後の一口を口に放り込んでゴミ箱へ捨てに行く。
その足で、サーフィンしてる人に声をかけてる百瀬くんの所に向かった。

『砂浜って走りにくい･･･百瀬くん普通に走ってたけど･･･』
「毎年合宿でやってるからじゃない？2年目だけど、百は元々運動神経良いし」
『ああ、さっきやってたっけ･･･』

砂浜の上をダッシュ。
何本もしてた。

「Aはゆっくり歩いてれば良いよー？」
『う･･･』

瑠璃は気遣ってくれてるんだろうけど、ゆっくりでも走れないのはちょっと悔しい。
瞬発力じゃないと思うんだ。なぜなら歩く度に足が砂に沈むから。
コツがあるのかな？

とろとろ歩いているうちに、百瀬くんがサーファーの人からボードを借りて海に出るのが目に入った。

ええ！？やったことあるの！？
大丈夫！？海ってただでさえ怖いのに、沈んだらいくら百瀬くんが運動神経良いからって！！

驚きと心配が入り混じって、考えもなしに走ろうとつま先に力を入れる。

『！！ブベっ』

ザサッと音がして、コケた。

「A、大丈夫！？」

少し前を歩いていた瑠璃が、引き返してくれて私を覗き込む。
手を差し出してくれた。

その手を取りながら、ありがとうと言って海の方に目をやる。
百瀬くんが、ボードに乗ろうとして、失敗していた。

『！！』

思わずガシッと瑠璃の腕を掴む。
瑠璃は海を見てから私を見て、体についた砂を払ってくれた。

「大丈夫大丈夫。ちゃんと監視員の人も見てるし、サーファーの人も貸した以上ちゃんと見てるから」
『あ、そっか。･･･そうだよね』

瑠璃の言葉にホッとして、でも心配もあってゆっくり、でも出来るだけ急いで、サーフィンをしてる人たちの場所に行った。