【アイナナ】vale5 (ページ37)

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百瀬くんが、学校帰りにリハビリと診察に行くと聞いた日、私は大学の講義が終わってから病院へ向かう。
リハビリステーションで百瀬くんと話してる病院の先生を見つけた。

「この分だと、日常生活でもそろそろギプスが取れそうかな」
「ホントですか！」

リハビリで汗をかいて途切れ途切れになってる百瀬くんの表情が、一瞬にしてパッと輝いた。
先生は申し訳無さそうに眉を下げる。

「すぐにサッカー出来るわけじゃないよ。焦らずゆっくりね」

百瀬くんの表情が少し影が差しているように見える。
先生もそれに気づいたのか、穏やかな笑みで百瀬くんの肩をポンと優しく叩いた。

「はい･･･」

百瀬くんが眉を下げて笑みをこぼす。

もう、サッカーの予選が始まって勝ち進んでいる。

“百瀬いなくても全国大会進めるように、練習しよう”

サッカー部の人たちのあの言葉通り、頑張ってる。
このまま勝ち進めば･･･もしかしたら、全国大会まで行ったら、百瀬くんも出られる可能性がないわけじゃない。
きっと百瀬くんも、サッカー部員の人たちもそう思ってるんだろう。

一縷の望みを抱えながら、リハビリが終わってギプスをつけられてる百瀬くんに声をかけた。

「今週末にある高校のサッカー予選、一緒に見に行かない？」

帰り道、松葉杖をつきながら私の横を歩いてる百瀬くんが言った。
今までサッカーの観戦に誘われるのは今まで何度かあったけど、百瀬くんが足を怪我してからは初めてだ。

勝ち進んでいるものの、結果を後で知るよりもその場で知りたいと思うんだろう。

『いいよ。どこであるの？』
「えっと･･･待って」

立ち止まって、壁に肩をつけてスマホをポケットから取り出す百瀬くん。
百瀬くんの姿勢が崩れないように支えながら答えを待った。

スマホを操作しながら時間と場所を教えられて、待ち合わせ場所と時間を決める。
再び歩き出した。

『勝つと良いね』
「うん！」

気になるんだろうな。自分が出れなかったから。
全国大会に進めますように。
そう願ってると、そういえばと百瀬くんが口を開く。

「大学の推薦、取れそうなんだ。今までの功績が認められてるのと、あとはテスト結果による」
『ホント？良かった！じゃあ勉強頑張ろ！』
「テストの日はね〜」

百瀬くんからテストの日程を聞く。
百瀬くんの誕生日の後だった。

そしてサッカーの試合予選当日。
願いの甲斐なく、サッカー部は全国大会への切符を手にすることが叶わなかった。