【アイナナ】vale5 (ページ36)

今日:9 hit、昨日:19 hit、合計:27,129 hit

235 ページ36

それからのお見舞いは、リハビリしてる姿を見れる事も多少あって、松葉杖で難なく歩けるまでに回復した頃に百瀬くんは、退院の日を迎えた。

タクシーだと割高だろうからと提案してくれたお父さんから車を借りて、百瀬くんと百瀬くんのお母さんを車で送ることをかって出た。
入院時の荷物やお見舞い品が多いからというのも、理由の1つだ。

最初、申し訳ないって断られたけど、余計なお世話かもしれないけど出来ることはしたいんですと伝えると、お礼を言いながら微笑んで頷いてくれた。

「入院、2ヶ月かかんなかったね」
「手術してない方が回復に時間かかるんだってお医者さんが言ってたわよ」
「このまま完治まで6ヶ月かかんなかったらいいなー」
「無理しないようにね」

運転席から、百瀬くんと百瀬くんのお母さんの話を聞く。

「ホントにありがと！Aさん」
「ありがとう。沢山お世話になりっぱなしで･･･」
『いえいえ、私が百瀬くんに出来ることが、これ位しか思いつかなかっただけなので』

お辞儀をしてくる百瀬くんのお母さんに、頭を上げてくださいと言いながら手を横に振る。
じゃあと手を振って車を発進させた。

ーー百瀬くんの足の完治が、6ヶ月かからなかったら･･･

そうしたら、全国大会の予選には出れるのだろうか。
本戦にはもとに戻れるのだろうか。

ーー･･･プロへの道は？

･･･祈ったり、願ったりすることはいくらでも出来る。
でも百瀬くんのもどかしかったり辛かったりする気持ちを、わかってあげられることは出来ないんだろう。
寄り添いたい、理解したいとは思うけどーー

私の夢は、百瀬くんの夢があってこそのものだから。

『自分だけで、したいこと･･･』

改めて自分の将来を真剣に考えなければいけない時期にかかっているのだ。

その考えが頭の端から抜けず、答えも見つからないまま、時は過ぎた。

・

約束した焼肉食べ放題に一緒に行ったり、夏は手ぶらでバーベキュー行けるとこに行ったり、百瀬くんと一緒に、例年と違った過ごし方をした。
とは言っても、百瀬くんが受験生というのは変わらないので、勉強を教える日のほうが多かったのは確かだが。

夏休みが終わる頃になっても百瀬くんの足からギプスは取れず、日に日に落ち込んできている百瀬くんを見ることが増えてきた9月上旬。
サッカーの全国大会に向けた予選は、すでに始まっていた。