223 ページ24
『でね、好きな食べ物教えてくれて！じーんってしちゃった』
次の日、バレンタイン。
百瀬くんとのデート中、胸を押さえ、昨日のことを思い出しながら話す。
列に一緒に並んでる百瀬くんが、笑顔で頷きながら口を開いた。
「凄いじゃん！逃げなかったんだ？」
『うん。それよりもファン個人に教えてくれた事が重大すぎて』
「うん？友達じゃないの？」
『片方は友達でも、もう1人とは完全にアイドルとファンだよ』
「そっか〜。んでその後どうしたの？」
意気揚々と口を開こうとするものの、スタッフさんに促される。
開いたフェンスを通って、荷物置き場に手荷物を置く。
促されるまま席に座った。
『送るって言われたけど、さすがにそこはテンパりが限界を超えそうで、お断りして帰った』
「うわー、わかる！オレもそういう時、めっちゃテンパる！どうしたらいいのか分かんないよね」
笑顔で言う百瀬くんの言葉に目を見開く。
めっちゃコミュ力高いのに？
初対面の人とだってすぐに仲良くなれるのに？
意外な一面に驚いてる間に、安全バーが下げられて喋ることが出来なくなった。
スタッフの、いってらっしゃーいと笑顔で見送ってくれるすぐ後にカタカタと動き出す乗り物。
頂点の先が見えなくなるのを視線で確認した時、百瀬くんの手が私の手に添えられる。
百瀬くんを見てホッとしたのもつかの間、カタン、という音と共に、私の叫び声が響いた。
ここはパンダナメコランド。
遊園地って屋外のとこ行ったことないねと言う百瀬くんの言葉を受けて、折角の一周年だから大きいとこ行っちゃおう！って私が提案した。
バレンタインだからという理由をつけて、パスポートは私持ち。
お返しの難易度、めっちゃ上げるね！と言われたから、期待してるとニヤついといた。
『うあ〜、ぐあんぐあんする･･･』
「そこのベンチ座ろ？」
『うん』
「ちょっと待ってて！飲みもん･･･」
私が座るなり、バッと駆け出そうな百瀬くんの腕を掴んで首を振る。
ペットボトルの飲み物は持ってきてるのだ。
鞄からそれを覗かせると、百瀬くんは隣りに座ってギュッと私を抱きしめた。
驚いたものの、優しく擦られる背中。
ダウン越しに触れられる感覚と、百瀬くんの香りと温かさにホッとして目を閉じる。
「頭撫でた方がいい？」
『ううん。大丈夫･･･』
ぐあんぐあんしてた頭はいつの間にか落ち着いて、そっと体を離す。
『ありがと。落ち着いた』
百瀬くんがホッとしたように笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 328人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：miz | 作成日時：2022年10月19日 13時
