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今日は瑠璃も妹もいない。
瑠璃はバイトが抜けられないらしいし、妹は塾。4月から中3で受験生だもんね。
ちょっと残念だけど、まあそういう日もある。
ただ1人は久々だなぁ、なんて思いながらライブハウスへ入る。
プレゼント受け取りの所に行った。
プレゼント受付に並ぶ。
バレンタイン前日だからか、かなり並んでる。
順番を待ってると、店長さんが歩み寄ってきた。
「Aさん、並んでるの？」
『こんばんは！はい。チョコあげたいなって。あ、こっちはみなさんでどうぞ』
トリュフ2個入りの箱が10箱入ってる紙袋を差し出すと、中を覗かれる。
「ありがとう。そっちが預ける方？」
店長さんの視線が、私がまだ持ってる紙袋に行った。
私のもう片方の手に握っているのは、去年と同じチョコが2箱入ってる紙袋だ。
去年は千さんがこれを気に入って食べてくれたって、大神くんが言ってたし。
これ以外の好みを知らないなら、一択。
これは受付にお願いするつもりだったけど、もしかして店長さんから渡してくれるとか思ってくれてるんだろうか。
でも親しくなったとはいえ、ファンの子たちが沢山いるこの場での特別扱いは遠慮したい。
そう思って口を開く。
『はい。でもちゃんと並ん･･･』
「えと･･･1人？」
店長さんが、私の言葉を遮って周囲をキョロキョロ見渡す。
今日はそうです、と答えると、視線がやっと合った。
かと思えば私の耳元に、内緒話でもするように手を添えてこそっと言われた。
「じゃあ帰る前に楽屋で渡したら？」
その言葉に目を見開く。
顔を見合わせた。
久々に聞いた言葉だからだ。
『いや、でも･･･』
「ファンの子相手なら、こんなこと言わないよ。ほら」
店長さんの手が私の腕を軽く引っ張る。
呆気なく並んでる列から出てしまった。
優しさなのか面白がってるだけなのか。
『･･･帰り、ファンの子たちに取り囲まれたら、店長のせいですよ』
「え〜？そんな急いで帰らなくていいよ？万理たちもスタッフと同じ頃に帰るんだし」
それはスタッフや大神くんたちと帰って、と言ってるんですか、と聞きたいのにイエスの答えが怖くて聞けない。千さんと一緒に帰るとか、想像するだけで冬なのに溶けそう。
スタッフでもないんだし。
いや、ホームページ作成には一枚噛んでるけど。
『じゃあ渡して即帰ります』
ええ〜？と面白くなさそうな声のわりに笑顔の店長に頭を下げ、ライブが始まるのを待った。
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作者名：miz | 作成日時：2022年10月19日 13時
