【アイナナ】vale5 (ページ20)

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百瀬くんの目が細くなった。

「オレも！」

嬉しそうで優しい笑顔だ。

『予選はどう？』
「うん？次が準々決勝かな」
『まずは全国大会出場だね』
「決まったら、また見に来てくれる？」
『行く行く！』

やった！と嬉しそうな笑顔で、百瀬くんがスキップする。

自転車を押しながらスキップって。
やっぱり可愛いなあ。

「Aさんのこと国立連れて行くね！」
『サッカー漫画みたいなセリフだね。一緒に切磋琢磨した相手に言うもんじゃないの？』
「ちょっと言ってみたかったんだよね〜。青春っぽいじゃん？」
『ふふふ、うん、じゃあ連れてって』

追いかけて頬を緩ませながらノる。
立ち止まって私を待ってる百瀬くんが、照れたように笑って、大きく頷いた。

1月ーー

結果から言えば、百瀬くんたちは全国大会へ進んだ。
どんどん勝ち進んで、決勝まで行った。

国立で午後に行われた決勝は、運良く大学の講義が午前中だけだったため見に行くことが出来た。
瑠璃とも落ち合うことが出来て、一緒に試合を見れたわけだが･･･

『準優勝･･･』

相手チームの、ハグだったり肩を抱き合いながら全身で喜んでるさまが見えるも、百瀬くんたちのチームメンバーは、悔しそうに顔を歪めてる人や泣いてる人、励ましや慰めというようにポンポンと肩を叩きあったりしてる人が見えた。

準優勝、頑張った！と拍手をし始めた人を筆頭に、百瀬くんたちのチームに向けて拍手が送られる。
私も目に涙が浮かぶものの、拍手をした。

なんて声かけたらいいんだろうか。

準優勝は十分すごいことだけど、優勝を目標に掲げてたし、プロになるつもりだから余計に悔しいよね。ものすごい頑張ってたし。
自分の努力が実らなかった時の悔しさは、とってもよくわかる。

拍手に頭を下げた百瀬くんたちのチームを見ながら、かける言葉が本心なのに、ありきたりなもの浮かばないのがもどかしかった。

のだがーー

「来年こそは優勝しよう！」

サッカー部の面々を励ましている百瀬くんを見た。

すっごく落ち込んでるだろうに、さすがキャプテンだというべきか。

以前も百瀬くんのこういうとこ見たことがある。
1年前のことなのに、随分前のことのように思えた。

「準優勝のお祝いしよう！Aちゃんとこも来る？おばさん、腕振るっちゃう！」

瑠璃のお母さんが笑顔でウインクする。

一番辛いのは百瀬くんだよね、と思って、お母さんに聞いてから、百瀬くんちにお呼ばれした。