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かと思えば、スクっと顔をあげる。
「いやまあ、まだ母ちゃんたちに言ってないんだけどさ。望みがあるって言ってもらってるから、もう言うつもりなんだけど、言ったら、会うの少なくなるって決定だし、その前にAさんには言っとこうと思って!」
『え、凄い!望みあるって、夢に近づいてる!』
百瀬くんが、えへへ、と照れたように笑う。
私も微笑んで、自分が目指してる事を口にすることにした。
『実は私も、マネジメントの講義受講してて。サッカー選手のマネジメントとかいいなって思ってるんだよね。まだ広い意味でのマネジメントしか知らないけど』
岡崎くんと一緒に受講してる講義だ。
岡崎くんは明確な目標があるけど、まだ私はとっかかり始めたくらいだから、頑張って勉強しなきゃだけど。
でも勉強は得意だから。
百瀬くんは、大きく目を見開いた。
「教師とかじゃないの?」
『夢の選択肢はたくさんある方がいいと思って。人に教えるのも好きだから、教員免許も取るよ。知識は何でも取り入れたいし、資格や免許も可能なものは取りたい』
「あ、そっか。言ってたっけ。ワープロ検定ん時位に」
『うん。それで来年中には絞る。3年の後半になれば、就活の目星つけないといけないし』
話してると食事が運ばれてきた。
テーブルに揃って、店員さんが去ってから再び口を開く。
『もしサッカー選手のマネジメントに決めたら、将来も一緒にいれる可能性があるよね』
笑顔でカトラリーを手に取る。
百瀬くんがポツリと呟いた。
「そんなことしなくても、ずっと一緒にいれる方法あんじゃん・・・」
『え・・・』
その言葉はちゃんと届いて、思わず目を見開く。
百瀬くんの顔が、瞬間湯沸かし器のように急激に真っ赤になった。
「あ、えと!将来的に!大学出た先決まってから!」
つられて私も急激に体温が上がる。
いや、つられてじゃない。
想像したからだ。
いやこれじゃ期限言ってるみたいなもん!!と上を向いて頭を抱えだす百瀬くん。
それがあまりにもわざとらしくて、出来るだけ軽くさせようとしてる気遣いが垣間見えて、思わず口角が上がる。
『うん、お互いに大学出たらね』
「えっ!?いいの!?」
目を、これでもかと大きくさせた百瀬くんに、笑顔で頷いた。
ーー
結局、会えなくなるよりはと、時間が合う時に勉強を教える約束をした。
夢に向かってお互い頑張ろうって。
その夢を思い描きながら、家のドアを開けた。
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作者名:miz | 作成日時:2022年10月19日 13時