【アイナナ】vale5 (ページ11)

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210　(2人の夢) ページ11

『ん？その感覚わかるの？』
「わかるっていうか想像つくだけだけどさ、百がプロのサッカー選手になって有名になったらって考えたら、その時の気持ちは、今のAの気持ちと似てるのかなって思って。サッカーの試合してる時ならともかく、百自身を見たって興奮しないしさ」

苦笑しながら言う瑠璃の言葉に目を見張る。

急に百瀬くんの話になったことに驚くも、瑠璃の言うことを想像すると、確かに似てる気はする。
でも大神くんは元好きな人で友達のカテゴリにいる人で、百瀬くんは今好きで彼氏だし、違う感情が出てくるだろうと思うけど。
でも実際に体験すると、想像と違ったりすることもあるよね。

そう思ってると、瑠璃が再び口を開いた。

「昨日そういう話したんだよね。夏休みが終わればさ、進路決めるじゃん。百、3年になっても部活やってくって。その延長で話したの」
『ああ、プロに望みがあるなら推薦の可能性があるやつね。可能性だけだけど』
「そうそう。今年も何人か3年になってもやる人いるって」
『へえ、実力揃いだもんね。全国優勝目指してるって言ってたし』

瑠璃が、うんうんと頷く。

「やっぱAには話してたか」
『うん。この前デートした時に』

そう返して頷く。
まだ明るい時間だからと、いつもの分岐点で手を振って瑠璃と別れた後、百瀬くんとのこの前のデートを思い出しながら歩いた。

ーー

デートと言っても、いつものように食事して送ってもらって、ってだけだけど、それだけでも会えるんだし充分良いのだが。

食事を注文した後すぐ、百瀬くんが真面目な顔をした。

「あのさ、夏休み終わったら進路希望出すんだけどさ。そんでオレ、サッカー選手になるって言ってるじゃん？」

相槌を打ちながら聞く。

「そうなると、3年になっても部活やってくってことなんだよね」

『うん。外部受験する人とかは辞めるけど、内部で推薦なら、3年生でもやるって聞いたことあるよ』

ただ、内部か外部かは決定してても、推薦かどうかはわからないはずだ。
つまり、エスカレーターで大学に行くつもりとはいえ、3年生になったら受験生で、勉強もしなきゃいけないのは変わらないわけで。
それに加えてサッカー三昧なのも変わらないだろうわけで。

そこまで考えてハッとした。
百瀬くんを見ると、少し下がった眉が、ショボンとしているように見える。

『･･･今のような頻度で会えなくなる？』
「う･･･嫌だなぁ〜」

百瀬くんが、テーブルに片頬を乗せた。