【アイナナ】 vale 2 (ページ49)

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あ、これ、多分わかってる。
百瀬くん、瑠璃に言ったのかな、気づかれたのかな。

居心地の悪さを誤魔化すようにジト目で瑠璃を見ると、ごめんごめんと謝った瑠璃が、用意してくると自室へ行った。

ちょっと近所から距離のある大きな図書館に行くことにする。
入った途端、おお、と声が出そうになるのを堪える。
大きな書棚が沢山並んでいるのに圧倒された。

「凄いね」
『うん。楽しそう』
「え？眠くなりそう」

ヒソヒソと話して、瑠璃の最後の言葉に吹き出しそうになる。
宿題がまだ残ってるという瑠璃が先に席を取ってくれてる間に、志望校の赤本を探した。

とっても静か。
キリついたら興味持てる本を見つけて読みたいな。前期やっていたドラマの原作。終わり方がドラマと原作違うらしいし。

志望校の志望学科の赤本を見つけて手を伸ばす。

「あ」

不意に後ろから大きな声がして振り向いた。

眼鏡の男子がこっちを向いていて、慌てたように自分の口を手で塞ぐ。
どうやらこの人が声を出したみたいだけど･･･

何なんだろう？
まあ知らない人だし私には関係ないよね。

首を傾げつつも切り替えて、赤本を手に取った。
瑠璃がいる席に行こうと振り返ると、さっきの男子が目の前にいてギョッとする。

「あ、あの！」
『はい？』

小声で返事を返すとはいえ、どう考えても私の目は訝しげに映るに違いない。
それをわかってるのか、その男子は少し申し訳なさげに口を開いた。

「それ借りるんですか？」
『うん？』

指さされたソレは、私の手にある赤本だ。
この人も必要なのかな？

『ここでやっちゃうので借りませんよ。そちらが今時間なくて、今から借りるようであればお譲りしますけど』

同じ物は棚には並んでいない。
私は問題をいくつか解く予定だったけど、家の近所の図書館にも赤本はあるだろうから、譲ったっていい。本読むのもいいし参考書解くのもいいし。

私が答えると、男子がホッとしたように表情が緩む。

「いえ。時間はあります。借りないのであれば、次は自分に貸してもらえますか？･･･ええと、あの辺にいると思うので」

眼鏡の男子は、リュックが置いてある席を指さす。

『わかりました。なるべく早くに渡しますね』
「いえ、ごゆっくり」

頷いてから手を振った。

瑠璃を見つけて席につくと赤本を開く。

志望校が同じなんだ。多分学部も。
お互いに受かれば顔を合わせることもあるかも。

そう思ってチラリと眼鏡の男子に目線をやった。