【アイナナ】 vale 2 (ページ47)

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「この前、Aさんがオレのこと、いつでも楽しそうって言ってくれたじゃんか」
『ああ、うん』
「オレからすれば、Aさんも、いっつも楽しそうに笑ってるよ。花火の事もお台場ん時もさ！」

『うん？そう？』

確かにワクワクしてたし楽しかったなぁ。
でもイライラすることもあるし、怒ったりすることもあるし、落ち込んだりすることもあるし、普通だと思うけど。

そう思いつつも自分の両頬を擦ってしまう。

自分でどんな表情してるのか、わからないこともあるもんね。誤解されたりもするし。

いつもかなー？という疑問が呟きとして口をついて出る。
百瀬くんがそれに気づいたようで、笑顔をのぞかせた。

「オレ、結構な率で笑顔のAさんにつられる事あるからさ、そういうとこめっちゃいいなって思ってんだ」

褒められると照れる。でも嬉しいな。
自然と頬が緩んで、思うままに口を開いた。

『いつもの私と同じだ』

「へ？」

気づけばいつもの中間地点。
街灯の下で立ち止まって百瀬くんを見上げる。
いつも笑顔の百瀬くんが脳裏をよぎって、不意に笑みがこぼれた。

『いつも百瀬くんが笑顔だから、私もいつも笑顔になっちゃうんだ。それと同じだね』

百瀬くんのそういう所、私もいいなって思うよ、と続けようとした。
百瀬くんの目が大きく見開いていて、顔から笑顔が消えてることに気づいて口が開かない。

同じように思ってるよって言ったのの、何かいけなかったんだろうか！？
一瞬でそういう思考回路になって青ざめてきた。

「･･･っそういうの言われると期待しちゃうじゃん･･･」

･･････ん？

キョトンとして百瀬くんをじっと見てしまう。
百瀬くんは、ぎゅうぅぅぅと自分のシャツの胸元を握りしめてる。
少し泣きそうな顔で。

百瀬くんの口元がすぐに緩んだ。

「Aさんのこと、めっちゃ好き」

かと思えば百瀬くんは慌てたように片手を横に振る。

「ごめん！どうしても言いたくなっちゃって！気軽に言っちゃいけないんだってのは分かってんだけど！あ、いや、軽い気持ちなんじゃなくて！」

どう答えていいのか頭が回らなくて、百瀬くんの勢いにつられてぎこちなく頷く。

「ええと･･･、･･･っ、受験！受験終わったら返事聞かしてくれる！？それまでいつも通りでいてほしいんだけど！」

百瀬くんの迫力のある勢いに負けて、考えるよりも早くに、首を縦に振っていた。