【アイナナ】 vale 2 (ページ40)

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「A、好きな人出来た〜？」
『え！？いないよ！？』
「えー？私の気持ちめっちゃわかるっていう風に頷いたのに」
『過去の経験から！深い意味はないよ！？』

苦笑いすると、瑠璃が頬杖をついて笑顔を見せた。

「なーんだ。残念」

私が自分の恋バナするの苦手っていうの覚えてくれてる事に嬉しくなる。
と同時にハッとした。

私が話さないなら瑠璃も話せないんじゃ？

窺うように瑠璃を見ると、ストローでジュースを飲んでた瑠璃が、キョトンとした表情で首を傾げる。
私の最近の話をすることにした。

『でも推しは出来たよ』
「オシ･･･？」

なにそれ？と言いたげに難しそうな顔をした瑠璃に、最近行く頻度が上がったライブハウスの話をする。
瑠璃が興味ありげにキラキラした目をした。

「へえ、Aが昔好きだった人！」
『そこ！？ライブに興味があるんじゃなくて！？』
「バンドよりそこでしょ。何言ってんの」
『私的にはライブだよ！』

はいはい、と軽くあしらわれて少しへこむ。
瑠璃が嬉しそうに口を開いた。

「その昔好きだった友達、会ってみたいな〜」
『あ、それ難しいよ』
「え？」

見せるなら可能だ。一緒にライブに行けばいい。
でも会うとなると別。

連絡手段は手紙しかないし、ほぼ一方通行。
大神くんはいつでもおいでと言ってくれたけど、ファンが多くて出待ちの子もいるから、関わりに行くのは意外と厳しいと思う。

簡単にそれを説明すると、瑠璃が、うひゃーと声を上げた。

「随分アイドル的な扱いなんだね。そんなに格好いいの？」

『うーん･･･容姿は良い。友達はちょっとズレてるけど何でもソツなく出来る優しい人で、その人に言わせれば、私の推しは手がかかる問題児らしいよ。でもどうでもいい位声が良いから私には問題なし』
「A、ブレないね･･･その友達もAにはズレてるって言われたくないと思うよ･･･」
『ズレてないし！鈍くさいのは認めるけど！』
「あはは、自分で言う？」

フンス！と力を込めて抗議したのに笑われてしまった。
でも今日初めて普通に笑った瑠璃を見た気がする。

･･･事情聞けなくても、明るい話題で元気になってくれたらいいな。
そう思って一緒に行ってみないかと誘った。

『見せる事なら出来るよ』

「あー･･･でもお金がなー･･･」

困った表情の瑠璃を見て気づく。
そういえば私も、4月から百瀬くんと出かけたりした時、お財布の中身が寂しいことになってた時あったっけ。