【アイナナ】 vale 2 (ページ37)

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そんな事までしてもらう理由なんてないのに。
偶然見つけたからといってわざわざ。

共通で好きな物だとか、よっぽど好きだって印象がないと、友達にだってなかなかしないよね。

ーーなんか嬉しい。
ここに来れない事情がもしあったら、現像された写真を見せてもらって、めちゃくちゃ喜ぶ自分が簡単に想像出来る。

『ありがとう。嬉しい』

笑顔でお礼を言うと、百瀬くんも嬉しそうに笑顔を見せてくれた。

そのまま一緒に電車に乗って帰ることにして改札に向かう途中、大きな広告を目にしてお互いに止まる。

「今度花火大会あんだね」
『あ、ホントだ』

日付からいって、この夏最後の花火大会っぽい。
再び歩き始めながら口を開いた。

『夏休みが終わるね〜』
「ああー、宿題〜」

百瀬くんがショボンとしたような態度で苦笑する。
思わず、ふふと笑った。

『終わってないの？』
「合宿だ試合だってやってたら、いつの間にか時間経ってるよね！」
『あはは、頑張って』

改札を抜けてエスカレーターでホームへ向かう。
百瀬くんが後ろから声をかけてきた。

「花火大会の日って空いてる？」

聞かれたことで、お誘いかなと思ってスケジュールを思い出す。
宿題は既に終わってるし夏期講習も花火大会頃にはない。ライブもない。
受験まではひたすら復習を重ねるのみで問題はないのだけど。

「あ、やっぱ受験だからーー」
『花火大会だけなら良いよ』

日中から出かけるよりは、勉強に充てる時間があるから息抜きとして作用するだろうと判断した。
それに･･･

ホームでパアッと喜ぶような笑顔の百瀬くんを見て微笑む。

この表情を見れるなら、頷いてしまうな、と思った。

電車に入ると人の多さに少し口角が下がるものの、電車に足を踏み入れた途端、広告に目を奪われる。
あっという間に口角は上がった。

ここでも周年記念ポスターがある！
この沿線で広告ジャックしてる車両があるのは知ってたけど、ここだったんだ！
今アニメやってるからだろうけど！
苦手なほぼ満員電車も、そのイラストを見れるだけで元気になれる。

「あはは、すんごい嬉しそう」
『嬉しいよ！もー、人が少なかったら写真撮るのに』
「またチャンスあったらいいね」

電車のドアが閉じると同時に、百瀬くんとドア辺りでヒソヒソと会話。

声近い。
顔近い。
落ち着かない。

女友達だと大丈夫？って気にしたり、知らない人だと満員困ったな〜位しか思わないのに。
好みの声だからかちょっと緊張する。