【アイナナ】 vale 2 (ページ31)

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〜Aside〜

ハラハラと緊張した気持ちは、ライブハウスの照明が消えると同時にワクワクに変わった。

Re:valeだー！

パッと隠しきれない緩みきった表情を自覚するも、隠す気は毛頭ない。
それなのに、あれ？と真顔になった。

千さんと大神くんは変わらないけど、他のバンドの人たちが前と違う。
何人かいてローテーションで出てるのか、変わったのかわからないけど。

まあいいか。
曲は一緒だし！

千さんの声と曲に聴き惚れてポーッとなる。
大神くんは昔を知ってる人だからか、前好きだった人だけどポーッとならない。不思議だ。

周りの人たちはそれぞれにノリノリで拍子を取っていたり、千〜！とか万〜！とか大声で呼んでる。
曲に合わせて拍子を取るのは私には難易度高いけど、呼ぶのは出来るかな？
いや、呼び捨てとか恐れ多い！！友達相手でも男子を名前で呼び捨てとかしたことないのに！

くん付けとか愛称呼びとかくらいで。

前に聴いた曲が一曲だけあって、それは思わずノる。
不意に大神くんと視線があったような気がした。

『！！』

ふと柔らかく微笑んだような笑みを見せる大神くん。
びっくり。

まさか気づいた？私に。

「ファンサ私にしてくれた〜！」
「私にだよ！」

後ろにいる女の子2人の声に、大神くんの笑顔の取り合いが始まってしまったことを一瞬で理解する。
誰相手にかは大神くんにしかわからないことだろうけど、大神くんがこの辺にファンサをした、というのは事実だ。

それをいいように解釈しても、心の中で思ってる分ならバチは当たらないよね。
なんというかーー

アイドルみたいだ。

千さんもファンサしないかな？いや、声だけで十分すぎる。ファンサなんてされたら相乗効果が恐ろしくて、昇天しかねない顔面してるしこれでいいや。

ライブが終わると余韻に浸っていて、出口へと人波が移動してるのに気づいて慌てる。
CDを買って鞄に入れてると、横から声がかかった。

「Aさん？ちょっといいですか？」

見ると、さっき手紙を預けたスタッフさん。
一瞬で、ライブが始まるまでの不安が蘇る。

『･･･はい？』

苗字は多分、手紙の裏を見たんだよね？
やっぱり私、なんか変だったんだろうか。このスタッフさん、すぐにどっか行っちゃってたし。

血の気が引きながらビクビクしてると、スタッフさんは両手の平を私に向けて横に振る。

「あ、ここのスタッフなんだけど、怪しいもんじゃなくて」

わかります、という意味で頷いた。