【アイナナ】 vale 2 (ページ27)

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誤解されるのってしんどい。
百瀬くんはそういう体験、したことある上で変わっていってるのかな？いや全然想像つかない。

百瀬くんがニコッと笑った。

「苦手なタイプはないなー。誰もがいいトコあるしさ。誰かにとっての短所も他人から見れば長所になったりしない？」
『私の運動音痴も？』
「反射神経と動体視力の問題で、運動音痴じゃないよ？」

ニカッと笑う百瀬くん。
前に言ってくれたことと同じだ。

「え？何？運動音痴じゃないの？」
「話に聞いたらさ、Aさんって持久力はあるみたいなんだよね」

瑠璃のポカンとした問いに百瀬くんが答える。
百瀬くんは、ね？と私に笑いかけた。

『何かそうらしいよ』

自分のことなのにと瑠璃に笑われる。

百瀬くんと弟と分かれてクラスの所に戻ると、瑠璃が口を尖らせた。

「百の方がAのこと分かってるみたい」
『あはは、話す内容が違っただけでしょ？視点が違うというか』
「ああ、なるほど。運動神経の細かいとこって私あまり考えないもんなあ」
『私も瑠璃と同じだよ』

瑠璃は納得してくれたようで、私は自分の席からそっと百瀬くんがいる方へ視線をやる。

苦手なタイプとか、プールで私を助けてくれたけど説教してきた男の人のこととか、他にも、百瀬くんには時々ハッとさせられる。

私には尊敬する気持ちが生まれるけど、瑠璃からしたら確かに劣等感が生まれる時もあるんだろうな。私が妹に持つ感情と、どれくらい同じなのかはわからないけど。

でも姉弟揃ってモテるのは同じだな〜と、百瀬くんの周りにいる多くの友達らしき人達を見て、クスッと笑みを浮かべた。

・

体育祭が終わり、模試対策で瑠璃と勉強もして、期末テストからの夏休み突入が目前に迫った日。
受験することにした私は、夏期講習だけ塾へ行く手続きを親にされた。学力落ちてないんだけど、一応保険だよね。大事大事。

「姉ちゃん、前妹と行ったライブあるってサイトに載ってるけど」

お風呂次入ってと言う時にノックした弟の部屋のドア。
ドアを開けて出てきた弟が、開口一番言った。

『Re:valeのライブあるんだ！いつ！？』

この2、3ヶ月、ライブはあるものの行くチャンスに恵まれなかった。
ファンレターという名の、大神くんの本名が書かれている封筒は、ずっと自分の机にしまったままだ。

「夏休みのー」

急いで自分のスケジュール帳を確認する。
夏期講習ない日だ。テストもない。行けそう。