【アイナナ】 vale 2 (ページ26)

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百瀬くんがヒョイと私の家の卵焼きを口にすると、嬉しそうに口角が上がった。

「Aさんお弁当作り手伝ったの？」
『うん？何で分かったの？』
「卵焼き、前と同じ味」

驚いて大きく目を見開く。
実際に卵焼きだけは作ったからだ。

「卵焼きってそんなに味変わらないと思うけど」

弟がポカンとした顔で言った。

お母さんがニコニコして口を開く。

「私は味付け適当だから、いつも少しずつは違うとは思うわよ」
「わかります。目分量でやりますよね〜」

瑠璃のお母さんも笑顔で頷いた。
妹の表情がパッと輝く。

「あ、そっか！お姉ちゃん、出来ない分きちんと量るからだ！あと巻くたびにしっかり焼いてるから、食感もいつももっさり･･･」
『妹？オブラートって言葉知ってる？』

「え？何？Aが作ったの？私も頂いていいですか？」
「どうぞー」

瑠璃が興味津々といったふうに、卵焼きに箸をつける。
いや、ちょっと恐る恐る？

『瑠璃。しげしげ見る必要が？』
「だってAが作ったんなら注意が･･･」
『ちょっと？』

軽く睨むと瑠璃が冗談だと言いながらいたずらな笑みを浮かべた。
パクっと口に入れると、パッと口角が上がる。

「へえ、味が美味しい！」

味がって。食感は微妙ってことよね。知ってるけど！

突っ込む気すらなくなって、瑠璃のお母さんに、失礼な子でごめんねと謝られる。
気にしてないと笑って返す。いつものことだからだ。

「日々上達して頑張ってるね、A」
『卵焼きだけ時々ね』

瑠璃が努力の姿勢は流石だと褒めてくれた。

最近は卵焼きだけちょいちょい練習してる。
焼き模様がついちゃうけど、白身が1箇所に集中することがなくなってきた。
調味料はいつもグラム量ってるけど。

ご飯を食べ終わってみんなと別れる。
クラスに戻る時、何度も百瀬くんが声をかけられていて、その度に止まる。

『百瀬くん、友達多いね』
「そう？でも皆と仲良く出来るなら、楽しく過ごせるから幸せだなって思うんだよね」
『苦手なタイプってないの？』

人間関係に悩むなんて日常茶飯事で、結構自分に都合が悪いように考えてしまうことが多くて、時々しんどくなったりして。百瀬くんはそういう事ないのかな？

感情が顔に出にくい弟みたいなタイプは、結構損をしてると思う。
かくいう私も、むしろ好ましい人だと思っている人に対して何故か、嫌ってるでしょ？って言われる事があった。
何がそう見えるのかよくわからないけど。