【アイナナ】 vale 2 (ページ3)

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「友達と一緒に帰るとこだったのに、引き返させちゃってごめんね」

『気にしないで。本当に百瀬くん体調悪いんじゃないよね？』
「この通り元気！」

百瀬くんが両手を広げて体全体を見せてくれる。

顔ももう赤くないし、お腹痛そうとか具合悪そうな素振りは全く感じない。
ようやく安心して、ホッと息をついた。

『じゃあ言えなかった事って？』
「実は･･･姉ちゃんが彼氏と帰るなら、Aさん1人で帰るかもって思ってたから、一緒に帰ろうかと思って待ってたんだ」

気まずそうに苦笑いを浮かべる百瀬くん。

『･･･友達、瑠璃だけじゃないけど･･･』
「そ、そうだよね！？分かってんだけど！姉ちゃんから色んな友達の話は聞いてたし、大体紹介し合ってたし！」

ごめんね！？と慌てたように早口でまくし立てる百瀬くんは、テンパってるのか身振り手振りが大げさだ。
かと思えば、この状況に耐えられなくなったのか、校門に向かって一歩を踏み出してる。

「ほんとごめん！勝手に待ってんじゃなくて事前に約束しとけって思うよね！？今日は帰んね！じゃあ･･･」
『待って』

慌てて百瀬くんの鞄を掴んで止めた。
百瀬くんがピタッと止まって、へ？とこっちを見下ろす。

『一緒に帰る人いなくなっちゃったから、途中まで一緒に帰ってくれる？』

「！！･･･うん！」

パアッと嬉しそうに、百瀬くんは笑ってくれた。

・

『百瀬くん、友達出来た？』

帰り道、最初に気になって聞いたことはそれだった。

私を待っていたって事は、一緒に帰る友達はいなかったのかもしれない、なんて思ってしまった。
百瀬くん、めっちゃコミュ力高そうだけど。昨日の今日だけど、友達できそうなのに。

「えっ？出来たよ？弟くんとも仲良くなったし、他にも何人かーー」

クラスの前後左右の席の人とか、更にその友達とか。
そう話してくれる百瀬くんの表情は明るい。楽しそう。

『ならいいよ』
「うん？なにが？」
『一緒に帰る友達がいないのかと思っちゃったから』

私を待ってた位だ。
心配するのは自然だよね。

「ああ、オレが待ってたから？んー･･･誘われたけど、オレがAさんと帰りたかったんだよね！姉ちゃんが一緒じゃないなら帰れると思って！他の人と帰る可能性考えてなかったから、そんで情けなくなっちゃって･･･」

たはは、と乾いた笑いをしながら後頭部を掻く百瀬くん。

なるほど。だからしゃがんでたんだ。
やっと一連の言動に納得した。