【アイナナ】 vale 2 (ページ18)

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とはいえ、聴きに来たのは大神くんのバンドだし、帰ろうかと妹と外に出ることにした。
出た所には数人の女の子たちが何ヶ所かに固まっている。

「あ、さっき隣にいた人だ」

てってってっと小走りで、その人に向かって行く妹。
私はのんびり歩いてついていった。

だけど心は、のんびりではない。

歌もいいけどあの声！お金払って聴きに来る価値が十二分にある。安いくらい。
あれはいいなあ。また来よう。お小遣いで月1なら来れる金額だ。

ほわほわウキウキしながら一歩後ろで妹を待ってると、妹が集団から離れた。

「お姉ちゃん、あの人たち、出待ちだって」
『え？出待ち･･･って･･･よくアイドルの人たちがされてるっていう？』

信じられない気持ちを全面に出して聞くと、妹が深く頷く。

ストーカー規制の法律では確か、安全や平穏や名誉が害されるか、不安を感じさせればアウトなんだよね。つきまとったらNGだけど出待ちならいいのか･･･なあ？？

『凄いね。一般人の人気じゃないね･･･』
「うん･･･」
『でも私たちは帰ろう』
「話していかないの？」

知り合いでしょ？と言いたげに驚いた表情をする妹。

『ファンの子たちの注目浴びるのも大神くんの迷惑になるのも嫌だから帰る』

それに大神くんは心理的距離が比較的近いけど、その友達の人はそうではない。
むしろあれは、近くにいると声にドキドキしちゃって危ないやつ。
簡単におちそう。恋とは別だけど。

私の言葉に納得したらしい妹が、わかったと頷いてくれた。

『そういえば、大神くんの友達、何て名前か知ってる？聞いた？』

帰りの電車内で聞くと、妹がニンマリした。

「お姉ちゃんの好みどストライクの？」

『･･････よくわかったね･･･』
「前の学校の先輩、あんな感じだったよね。もうちょっと低かったけど」
『うるさい。知ってるなら教えてよ』

居心地悪い。
なんでも知ってる妹って、時に厄介だ。話したのは私だけど。

「ユキさんって言うんだって。大神さんは、バンさん」
『ああ！そういえばそう呼んでる人がいたっけ。ステージに4人いたから誰のことか分かんなかった』

大神くんはなんとなくわかるけど、ユキさんか。
心の中で、覚えるように何度か名前を繰り返す。

「また一緒に行ってもいいよ。Re:vale、私も気に入ったし音楽良かった。お兄ちゃんも行きたがるかもね」
『音楽好きだもんね〜』

3人で行くのも面白そうかもと少し思った。