【アイナナ】 vale 2 (ページ15)

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体験入部期間が始まった。
百瀬くんは友達に付き合って違う部にも遊びに行ったものの、やっぱりサッカー部に入ったらしい。
弟は吹奏楽部だ。

百瀬くんとは一緒に出かけた最後の日から、中々会うことはなくなっていた。

5月になって、大会のない部活の3年生が引退する時期。
私は夏に大会があるからまだあるけど、他校に彼氏のいる友達も、彼氏のいない友達も、部活は引退らしい。

「私受験するから引退でも良いんだ」

昼休み。
中庭でお弁当を食べながら他校の彼氏がいる子が言った。
ちなみに今日は瑠璃がいる。風邪で彼氏は休みらしい。

『受験するの？併設大学あるのに』
「うん。私が勉強したいのがないんだよね。皆はそのまま？」

それぞれがみんなを見渡す。
先に口を開いたのは、最近一緒にいることが多い友達だ。

「私はそのまま」
「私も受験する」

瑠璃も受験なのか。
寂しいな。

視線が私に集中したから、答えながら苦笑する。

『私は考え中』

資格は取っとくに越したことないと思ってるだけで、未来のビジョンはハッキリしたものはない。
だから今は資格に縋るだけしか出来ないんだけど。
でも流石に他を受験するなら決めなきゃいけない。

そう思ってると、最初に瑠璃が言葉を発した。

「考え中でも、どこでも受かりそうだよね、Aなら」
「芸術系や体育系の大学以外ね」
「調理師とかも難しいんじゃない？」
『ちょっと！？お弁当とか作ったことあるんだからね！？』
「え！？食べれるの！？誰食べたの！？お腹壊さなかった！？」
『ちょっと！言い方！！』

友達が私をイジり始める。
みんなでわーわー言ってると、最初の言葉以外会話に混ざってない瑠璃が、私たちを見て可笑しそうに笑った。
つられるようにみんなで笑う。
予鈴が鳴ってから、慌ててクラスに戻った。

・

家に帰ると、妹が笑顔で私を待っていた。

『･･･何』
「お姉ちゃん、ライブハウス行くんだよね？」
『え？･･･ああ･･･』

そういえば。
行ってないな。大神くんが日時書いてくれたし、どストライクの声の人もいるけど。

靴を脱いで洗面所に行っても妹が後ろをついてくる。
何なんだ。

･･･もしかして？

『一緒に行きたいの？ライブハウス』
「それは別に」

即答された。
じゃあ何と聞く前に、洗った顔をタオルで拭いてると、ニンマリとした笑顔の妹が鏡に映ってるのが見えた。