【アイナナ】 vale 2 (ページ1)

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次の日。
午前中授業で、帰りのHRが終わってから友達が私の席にやってきた。

「A、弟くんと帰る？」
『え。帰んないけど？』

何が悲しくて弟と帰らねばならんのか。いや方向一緒だけど。
小学生じゃあるまいし、帰る時間や家が同じだからと言って、弟と一緒に帰るという考えはなかった。

まあ中には一緒に帰る人もいるだろうけど。
なんか恥ずかしいし、私はどっちかというと遠慮したい。

ホッとしたように胸を押さえる友達。

「良かった。彼氏持ちの2人はお弁当作って、彼氏と待ち合わせてお花見するんだって」
『わー、いいなー』
「お花見してないの？」
『ううん。家族とはした』
「彼氏が良いのか。私らともしようよ。あ、来年かな？」

窓の外の結構散ってる桜を見て、そーだねーって話しながら、鞄を肩にかけて教室を出る。
下駄箱まで来て靴を履き替えて昇降口を出ると、百瀬くんが1人で閉じてるドアに背を預けて立っているのを見つけた。

パッと目が合うと、パアッと笑顔になる百瀬くん。
私もつられて笑った時、後ろから私を呼ぶ声がした。
一緒に降りてきた友達だ。

「Aー、行こ･･･誰？」
『瑠璃の弟さん』

「ああ！はじめましてー。私、瑠璃の友達のーー」
「姉から聞いてます！弟のーー」

2人が自己紹介してるのを傍から見て、なんで百瀬くんが1人でいたんだろうと首をひねる。
あ、友達待ってたとか？ありそう。

じゃあまたと百瀬くんに手を振る友達に、帰ろうと促された時、百瀬くんがなにか言いたげに口を開いたのが見えた。

振り返って百瀬くんを見る。

『ん？』
「あ･･･っ、いや、じゃあまた！」

はにかむように笑った百瀬くんが手を振ってくれる。

「A？帰ろう？」
『あ、うんーー･･･』

百瀬くんに手を振って、数歩先の友達に駆け寄る。
でもそこから先、足が進まない。

百瀬くん、友達待ってるんだよね？
でもなんというか。奥歯に物が挟まったような･･･表情っていうか。本来、言い方って言うけど。

気になって百瀬くんがいた所に視線をやる。

両手で顔を覆ってしゃがみこんでる百瀬くんに気づいてギョッとした。

『ごめん！今日1人で帰ってもらっていい？』
「ええ！？なんで！？」

友達が目を丸くして私を凝視してる。
私は踵を返しながら口を開いた。

『百瀬くん送るから！埋め合わせ今度するね！』

百瀬くんの体調が良くないのかもしれない！

そう思って、百瀬くんがしゃがみこんでる場所に戻った。