199 ページ49
万が私の方を向いてふっと柔らかく微笑んだ。
「前世のAの娘の名前が、リサだったって、Aが言ってたよ」
一瞬意味が理解できなくて、ゆっくり脳内で万の言葉を繰り返す。
前世の私。
の娘の名前。
パッと思い出すのは、私が百に、リサって名前にしようって言った時のこと。
『百は知ってたのかな』
「嬉しそうに言ってたよ。Aの中に、無意識に残ってる何かがあるんだって。百くんはAの前世から今までの全てを大事にしてるんだな」
キッチンにいる千とお母さんと楽しそうに話す、カウンターにいる百を見る。
前世の男との間にあった子の名前なんか、って思わないんだ。
涙が出るほど、幸せそうに笑ってくれたんだ。
その想いの深さに心がギュッと締め付けられる。
前世から今まで。
私もきっと、百に対して同じ気持ちだよと思った。
・
みんなで食事をしながら、そういえば千とおかりんが来たら言うよって言ってた事って何かと聞くと、千が真顔になった。
「Re:valeを一定期間休止にしよう」
「「『え！？』」」
万とお母さんと私が驚く。
知っていたのは千と百とおかりんだけらしい。
良いって言ったの？って目でおかりんを見ると、苦笑されながら頷かれる。
次に百を見ると、お茶碗とお箸を置いた百が、真っ直ぐな目で私を見た。
「ユキの提案なんだ。発表は出来れば歌番組に出る前がいいって話し合ったんだよ」
千の提案じゃなきゃ百は頷かないよね。百から休止にしようなんて言葉が出るのは考えられない。
『なんで？』
「それは、僕とモモとAの3人でRe:valeだからだ。AがバックにいないのはRe:valeじゃない」
千の言葉に目を見開く。
よく千が言う言葉だ。
『でもヤスから私に変わる時は休まなかったよ？』
千と百とで頑張っていた。今回もそうするんだと思っていたのに。
千は淡々とした表情で続けた。
「それは1ヶ月位だったから。Aが認められなきゃ僕は、一旦Re:valeを解散させてAを入れて再結成した、ってやるつもりだったよ」
「『聞いてないけど！？/ませんけど！？』」」
「･･･え？そうだっけ？」
少し冷や汗をかいた千を見て、お母さん以外全員が呆れの表情をする。
でも百だって確か似たようなこと言ってたような？
『でも百も言ってたような気がする』
「あー、かも･･･ってオレ、ユキと同じ考えってさすが以心伝心じゃない！？」
『そこで喜ぶのね』
呆れ顔でため息ついても、百は変わらず嬉しそうだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 133人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：miz | 作成日時：2021年11月8日 12時
