180 〜百side〜 ページ30
泣いていい立場じゃないけど、1人なら。
バンさんはめちゃくちゃ優しい人だから。
ユキのためにAに任せて自分を犠牲に出来ちゃう人だから。
Aがずっと、頼りにしてた人だから。
バンさんの愛情の深さを知る。
心の中のグチャグチャしたものが洗い流されるようで、ひとしきり泣くとスッキリした。
「･･･っよし！」
ぐっと目元を拭って、両頬を両手の平でパンッと叩いた。
それからAんち行って、こっそり顔洗って、Aに泣いたことバレて簡単に話して。
多分Aは、考えれば自分を想ってんのが誰なのかわかってしまうのかも知れない。
でも、考えないでいてくれると言ってくれたのは救いだ。
バンさんもAに気持ちがバレたくないだろうし、Aが困る顔を見たくない。
バンさんと、ユキと、オレだけが、知っていればいい。
他に誰かか知ってるかも知んないけど。
次の日の朝には心機一転、心が晴れやかだった。
Aと事務所に行って、ユキとおかりんとAと仕事の話して、歌詞に入れたい言葉をメモしてAに渡す。
バタバタする中で、Aとオレは順番に引っ越し。オレが先。
最低限必要な物はキャリーケースに入れたから、Aが来るまでは段ボールを開けずにいようって決心。
っていうか開けちゃったら散らかる気がすんだよね。一応2人の新居だし、そこは相談しつつでしょ！？
Aの引っ越しはトウマの誕生日当日。
トウマの誕生日のお祝いはZOOLだけでお祝いするらしく、プレゼントを近い日に渡して、当日はラビチャでおめでとうって送って。
いよいよ30日。
「いいですか？本日はお仕事終了して届け出たら帰ってくださいね？関係各所に結婚報告の記念品と用紙のコピーが届くのが8時頃を指定していますので！それから明日の午前中は一歩も外に出ないでください」
おかりんがクイッとメガネの縁を上げた。
「僕は？」
「千くんも出ないで下さい」
『いや、出ないでいいの、やったぁ位思ってるでしょ、千の場合』
「よくわかるね」
「オレも想像つくけど？」
若干ジト目でユキを見た。
明日の午前中は3人共オフになった。
午後は仕事があるけど、引っ越ししたてだからかオレたちの新居はバレてないし、そこまで対策せずとも良さそう。
でもユキのマンションはバレてるから、ユキは今日、オレたちんちに泊まる。
「僕初めて。2人の新居行くの」
『昨日の今日だし段ボール片付いてないけどね』
手伝うよ、とユキが笑顔を見せた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 133人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：miz | 作成日時：2021年11月8日 12時
