174 〜百side〜 ページ24
なんもないよって言っても、心優しいこの後輩たちは信じないよね。
「･･･Aさんのことですか？千さんですか？」
「それしかないって思われてんの！？」
おどけたように苦笑すると、4人揃って驚いた顔。
駐車場までエレベーターで降りがてら、ちょっとだけ話を聞いてもらうことにした。
「･･･例えばさ、自分の大事な人が、自分と同じ人を好きだったって知ったらどうする？」
よくある質問だ。ところがーー
「ええと･･･」
龍之介は困ったように頬をかき、天は眉間にシワを寄せ、楽とカオルちゃんに至ってはーー
「は？まんまアンタとユキのことでしょ？今更何よ」
「どうするも何も、百さんとAは付き合ってんじゃないすか」
「いやそうだけどユキじゃなくてさ！？最近知ったの！じゃあ逆に好きな人が自分以外の人と付き合ってたら、結構引きずんない？」
ツッコまれて焦りつつ苦笑い。
でもオレの言葉で、たちまち天に視線が集中した。
めっちゃジト目になった天。
への字口になってて、冷や汗かいてる。
少しの後、観念したように軽く息を吐いた天は、微笑みを覗かせながら口を開いた。
「ボクにとっては初恋だったけど、憧れですよ。良いお姉さんでライバルで先輩。百さんはAさんを大事にしてると思えるから、ずっとそのままでいてください。それが、ボクだけではなく百さんの大事な人にとっても喜ばしいことだと思いますけど」
「「天･･･」」
龍之介と一緒に、ジンとする。
「そうだよね！いやー、凄いなあ。天の言うように、好きな人が自分以外とだとしても幸せになれるなら、それが一番いいことだよね！」
笑顔で言う龍之介に、カオルちゃんが怖い顔をした。
「何言ってんの！自分に振り向かせてやるって押さなきゃ！“ワタシだけしか目に入らないようにしてさしあげますよ”とか！！」
めっちゃキラキラした目になった。
ああ
絶対カオルちゃんの頭ん中にはナギがいる･･･
力説したカオルちゃんはイキイキしてて楽しそうだから、オレもそれは嬉しくなるけど。
「でも自分以外で更に自分と仲良い奴と好きな奴が付き合ってたら、振り向かせるのも難しいし、かなりショックなのは確かだよな。ただ振られるのとはわけが違うんじゃないすか」
「うっ･･･」
グサッと楽の言葉が刺さる。
天が楽を呆れたように睨み、龍之介は苦笑いした。
オレも、だよねえと苦笑する他ない。
エレベーターが駐車場に着くと、龍之介がパッと明るい表情になった。
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作者名：miz | 作成日時：2021年11月8日 12時
