162 〜百side〜 ページ12
だからきっと、今がいい時なんだろうなって思える。
「Aさんの強さに甘えるんじゃなくて、そういう時は自分からいきなさいよ〜」
テーブルに頬杖をついた姉ちゃんが、からかうように笑う。
オレも楽しくなって頬を緩ませながら返した。
「姉ちゃんだって知ってるだろ？Aはそういうとこあるんだって」
昔を思い出すように目線を上にしてからこっちに戻す姉ちゃん。
昔の事は噂程度でしか知らなくても、本当だったりそれ以上に酷いこともあったりしたから、それを思い出したんだろう。
まあその内側の弱さを知ってるのは、ごくごく一部の人間だけだから、姉ちゃんは知らないだろうけど。
「うん。Aさん格好良かった。今もだけど」
「だろ？」
『そう見せてただけだって･･･』
恥ずかしそうに片手を振るAの表情に、もう緊張は見られない。
それから父ちゃんも帰ってきて夕飯を皆で食べてから帰った。
次の日。
事務所に早めに集合して今後の予定をおかりんとユキに話す。
おめでとうというお祝いの言葉を、Aと揃って聞けた後、ユキが口を開いた。
「お祝いはマンション買ってあげるよ」
ギョッとする。
「前に言ってたの、本気だったの！？」
『いらないよ』
「あ、安い？」
「『安くない！！』」
じゃあなにがいいのって眉間にしわ寄せるユキ。
「一緒に住まないの？」
「住むよ！」
「じゃあいいじゃない。いいとこの最上階」
「そこまで決めてんの！？」
『最上階って聞こえは良いけど何かあったら避難しずらそう。1階に行くまでにも時間かかるし。今でも結構かかるのに』
Aが渋い顔をした。
「1階行くまでは分かるけど、そうそう避難する程の何かは起こらないんじゃない？」
『今までに何回何かがあったか･･･』
オレの意見に深ーい溜め息を漏らしながら言うA。
おかりんも、そうですねぇと遠い目をする。
「人のこと言えないのに･･･」
頬を膨らませて反撃すると、Aが苦笑いした。
「じゃあ最上階やめよう。ほどほどに撮られないところ」
ユキが冷や汗をかいた。
そこが第1だよなぁって思いながら、結局はマンションのお金はどこから出るのかうやむやになった雰囲気のまま、話を切り上げた。
いや、オレが出すけどね！？
子供をどうするかの話もしたけど、先ずは結婚式を挙げるまではナシで、それ以降は出来たら出来たで、自然の流れやお互いの気持ちが強く“欲しい”っと思ったらっていう事は話しておいた。
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作者名：miz | 作成日時：2021年11月8日 12時
