146 〜百side〜 ページ46
Aの家に帰ってからブレーカーを上げる。
キャリーケースの車輪部分を拭いてからリビングに入った。
Aが映画撮影ロケでいない間、ここに来るつもりだったけど結局1回も来なかった。
無性に寂しくなるだろうと2日目で自覚したから。
そういう所、Aの方がオレのことわかってんのかも。
キャリーケースを寝室のクローゼット前に置くと、スマホで連絡先を探して受話器のマークをタップした。
電話を終えて冷蔵庫の中を見る。ほとんど食材がない。当然か。2週間いなかったんだし。
朝食の分だけでもいるよね。
Aは買う時間ないだろうしオレが買いに行こう。
帽子を被って、外に出た。
･･･Aがいるコテージから帰ってきたあの日。
仕事に間に合って収録を終えた後、楽屋で用意されたお弁当を食べながらユキに話した。元カレの事聞くの忘れた！聞けなかった！って。
「･･･え？Aの彼氏って、モモが初めてじゃなかったの」
「そのはずだけど！そういう噂があんの！」
若干ショックそうな顔をしたユキに、聞いた話をそのまま伝える。
ユキは相づちを打ちながら聞いてくれた後、感心したように言った。
「つまりここ最近急に僕らに言い寄る人が増えたのは、失恋したと思われてるからか。･･･じゃあ裏を返せば、A相手なら身を引くって思われてたんだ･･･」
ユキの言葉にハッとする。
そう言われればそうだ。
Aはあんなに自信なさげだったのに。
だからAの気持ちと、AがRe:valeとして世間に浸透する機会を待つって決めたのに。
･･･そうだ。
「AがRe:valeって浸透･･･」
あと3ヶ月と少しで、世間的にAがRe:valeとして活動して1年。
そろそろ今後の話をしてもいい時期かもしれない。
「･･･モモ」
考えてる途中にかけられたユキの声。
顔をあげると、ユキがめっちゃイケメンな顔でオレを見てる。
いや、いつもイケメンだけど！
なんだろう！？とドキドキしてると、ユキがゆっくり口を開く。
「モモ、僕は･･･」
発された言葉に再び目を見開いた。
・
帰ってきたAと並んでソファに座る。
話したいこといっぱいで、でも緊張もする。
ももりんを一気飲みして大きく息を吐いた。
『一気飲みよく出来るね･･･』
「あはは、Aは炭酸苦手だもんね！」
『紅茶飲む？温かくて落ち着くよ』
緊張してんのバレてる。
さすがA。
Aの紅茶を一口もらうと、じわっと体にしみてホッと肩の力が抜けた。
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作者名：miz | 作成日時：2021年9月6日 8時
