136 〜百side〜 ページ36
目をキッとしたおかりんの言葉にギョッとして焦る。
ふとユキが口を開いたのが見えて、横を見上げた。
「･･･僕は行く」
「･･･ユキ･･･」
「Aがあの時の万のように、どこかに行ってしまうなんて思ってるわけじゃない。けどもし重体だった時、僕に出来る事があれば手助けしたい」
まっすぐみんなを見据えてる。
その後ゆっくりオレにも向けられる。
その目が、モモはどうしたい？って聞いてる気がする。
自分の心は既に決まっていた。
「オレも。Aが不安な時、オレが一番近くにいたい。ーーお願い！行かせて下さい！」
おかりんをジッと見る。
困ったような戸惑ってるおかりんの口がゆっくり開かれそうになった時、天が優しく微笑んだ。
「子役庇って自分が病院に運ばれるなんてAさんらしいですが、戻ってきたらお説教だと伝えてください」
「天･･･」
「Aの恋人は百さんじゃないすか。止める理由なんてないですよ」
「楽･･･」
口角の上がった楽。
「ナギくんと環くんの夕食は俺たちに任せてください」
「龍之介くん･･･」
龍之介の力強い目が、頼もしい。
ユキと2人でおかりんを見る。
仕方なさそうに息を吐かれるも、その口角は上がっていた。
「･･･明日の9時、あけぼのテレビの仕事には間に合わせてください」
パッと笑顔になって、すぐさま鞄を手に取る。
ドアを開けようとした時、おかりんのスマホが鳴って、全員が一気にそちらに集中した。
「はい、岡崎です。･･･はい、はい。それで･･･」
みんなで固唾をのむ。
深刻そうな表情が緊張感を煽った。一瞬後。
「･･･はい！あ、そうなんですか！心配をおかけして申し訳ありません」
パアッと輝くような笑顔になったおかりんが、オレたちを見渡す。
完全に、申し訳ないとは言ってない表情で謝ってるおかりんを前に、静かにみんなでハイタッチをした。
「軽症？それとも何もなかった？」
電話を終えたおかりんに笑顔で聞く。
「車に轢かれそうになった子役を庇ったそうです。目視で多少のかすり傷がある以外はレントゲンも問題なかったそうです」
「良かったぁ！良かったですね、百さん、千さん！」
龍之介も楽も笑顔でこっちを向く。
オレも笑顔を返す。
ユキは力が抜けたようにソファに腰を下ろした。
「それで、どうします？Aさんの所に行きますか？」
天の安堵の微笑みに、ユキと目が合う。
オレたちも微笑み合ってから、みんなを向いて答えた。
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作者名：miz | 作成日時：2021年9月6日 8時
