130 ページ30
話していいか聞かれて頷いて、受付の椅子に座る。そうちゃんはまだいない。
電話してるみっちゃんが帽子もマスクもしてるからか、男性はみっちゃんを気にする素振りもなく、ポツリポツリと話し始めた。
「・・・昔の事を謝りたくて。告白された後その噂が一気に広まった事。事実だけど、嫌な思いさせた。ごめん」
ああ、その時の人か。事象は覚えてる。うっすら名前も分かりそうな気もする。
ただ既に終わったことだ。
・・・この人にとっては気がかりなのかもしれないけど。
「言いふらしたのは、近くで聞いてたらしいクラスの奴なんだ」
『・・・謝られても困ります。昔の事なので』
「そう、だよね・・・」
引きずったり、自分が恋愛対象になるわけないって思ってた原因は確かに、そういう事の積み重ねだった。
でも今は違う。
黒歴史だとか思い出したくもないとかじゃない。
私を認めてくれる人がいるから。
私を愛してくれる人がいるから。
Re:valeとして、百の恋人として、恥ずかしくない人でいたいから。
だから、良い意味で、どうでもいい事なんだ。
でもーー
若干うなだれている男性を見て、可哀想だと言った女の子が頭をよぎる。
『ただ、お互いに誤解が解けて良かったです』
微笑むと、男性がホッとしたように息を吐く。
そうちゃんが来ると、みっちゃんが席から立つ。
スタッフの迎えが来たらしく、私も行こうとすると呼び止められた。
「億安さんは、無口だったから皆近寄ることがあまりなかっただけで、真っ直ぐな人だっていうのは告白された時に分かったよ。ドラマ見た時は驚いたし、Re:valeになってからは、こんな笑う人だったんだって知って勿体ないことしたなって思った」
『それはーー』
それは、千と万と百に出会ったからだ。
ーーでも、それはこの人に告げることではない。
『芸能人だからじゃないかな?』
「あはは、そう?振られちゃった。じゃあ応援してる」
『ありがとう』
ホテルまで帰りがてらさっきの男性の事を少し話した後、みんなでホテルでの食事を終えてコテージに向かった。
道路を渡り終えた所で呼ばれて振り向くと、女の子が笑顔で走って来る。
「さっき三月くんにきいた!お兄さんと仲直りし・・・」
大声で言いながら女の子が渡る道路に、動く明かりが照らされている。
それが何かがわかって、すぐに来た道を引き返した。
『ーーっ危ない!!』
車のライトで一瞬止まる女の子の顔が見える。
手を伸ばしたと同時に、車のブレーキ音がした。
86人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:miz | 作成日時:2021年9月6日 8時